瀬地山角(東京大学大学院総合文化研究科教授)

 国策として、男性の育児休業取得促進が叫ばれている時代に、何と時代錯誤な議論を国会はやるのだろうか。国会議員の育児休業、当然認められるべきである。特に男性の宮崎謙介議員が「取りたい」と言ったことは高く評価したい。

 「税金を受け取る身である以上、育休取得は慎重であるべき」というのであれば、公務員は全員育休がとれなくなってしまう。国会議員には育休制度がないために、給与を全額受け取れることが、反対側の一つの論拠になっているようだが、だとすれば、しかるべく減額するなりして、きちんと制度を作ればよい。それほど時間のかかることだろうか?もし仮に今回、制度改正が間に合わないのであれば、自主的に返納するなどの形で、国民に説明すればすむことだ。「お金が問題なのではありません、男性も子育てに関わるべきだと思うからです」と堂々と主張し続けてほしい。

育休取得表明で話題になった宮崎謙介議員(奥)と妻の金子恵美議員
育休取得表明で話題になった宮崎謙介議員(奥)と妻の金子恵美議員
 少子化対策を掲げながら、一方で「育児は女のやることだ」という感覚を引きずる「育児なし」の「おじ(い)さんたち」の感覚がしみ出ている。こんな人たちが意思決定をするから、三世代同居が「少子化対策」として、補助金の対象になってしまったりするのだ。おばあちゃんに子どもの面倒を見させて待機児童を減らし、ついでに介護は嫁にやってもらおうというのだろう。育児休業法制定(1991年)以前の、なんとも「昭和な」感覚だ。「福祉は家族が担うことを基本とした上で」という「日本型福祉社会論」を明確に否定して生まれたのが、育児休業であり、介護保険制度だというのに。

 そもそも被雇用者ならば、出産後8週までは女性には産休があり、その後の育休では6ヶ月間、それまでの平均給与の67%が給付金として支給され、7ヶ月目以降は50%になる。原則は子どもが満1歳になるまでだ。しかし女性が6ヶ月で育休を取るのをやめて、男性が代わりに取ると、再び6ヶ月間67%が支給される仕組みとなっている。この67%には税金や保険料がかからないので、実はそれまでの手取額と大きくは変わらない。しかもこれは労働者の権利として認められているものなので、仮に勤務先に育休制度の規定がなかったとしても、申請があれば、雇用主は認めることが義務付けられている。非正規でも1年以上働いていて、復帰後も雇用が継続される場合には、やはり育休取得の権利が生じるので、国会議員は任期が短いから適用すべきではないという反論もあたらない。