橋本岳(衆院議員)

 宮崎謙介衆議院議員が「育休をとる」と宣言したことについてさまざまな議論が起こっています。本人のブログによると、そもそも「男性の育休取得の促進のために一石を投じる」ことを目的としたことですから、メディアに取り上げられ議論になることでそれなりに目的は果たされた面はあるのではないかと思います。

 ただ、その議論の前提となることが、いくつか誤っていることが散見されるためあまり噛み合わず深まっていない面もあるように思います。個人的に議論を眺めていて感じたことを整理して記したいと思います。

 まず本人のブログからして間違っていますが、いわゆる育休は「育児休暇」ではありません。正確には「育児休業」です。育休の根拠法は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」であり、すべて「育児休業」です。

 休暇と休業の違いは、ある論文(神吉知郁子「休日と休暇・休業」)によると「確固たる理由に基づくものではないと考えて差支えない」そうです。ですから間違っていても実際に支障があるわけではないですが、「休暇」という言葉が「ヒマ」という漢字を含み、楽をするようなイメージに繋がって誤解を招いているような気もします。いずれにしても、用語は正しく使いましょう。


国会議員の仕事は、義務ではなく権利である


 育児・介護休業法は、労働者の育児休業等について定めています。労働者とは労働基準法第9条において「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」となっています。また賃金とは、同法第11条において「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」となっています。

 国会議員は、衆議院または参議院に「使用される者」ではありません。衆議院や参議院と契約して議員になっているわけではないのです。したがって労基法における「労働者」ではありません。労働者であれば、一般的には事業主との雇用契約に基づき、労働基準法等の範囲内で労働することが義務付けられます。そしてその例外として育児休業が法律で保障されるという構造になっています。
第189通常国会招集日を迎え、記念撮影する和装振興議連の議員=2015年1月26日午後、国会内(酒巻俊介撮影)
 一方国会議員は、日本国憲法第43条、および公職選挙法により選挙で当選した者が衆議院議員または参議院議員の地位を得るという形で規定されています。

 しかし国会法のどこを眺めても課せられる義務はありません。例外は第5条の応召義務と、第124条の2の行為規範の遵守義務くらいです(ちなみに第119条では「各議院において、無礼の言を用い、又は他人の私生活にわたる言論をしてはならない。」となっています。お互い「無礼の言」を用いないよう気を付けましょうね。>議員諸兄姉)。

 一方で、本会議や委員会への出席、採決への参加などは、議員しか許されません。したがって法律的には、国会議員の議会活動は、法的には義務ではなく、権利にすぎないということです。本会議や委員会にどれだけ休もうと、寝ていようと、法的には全く何の問題もありません。いわんや政党の活動や、自分の後援会活動や選挙運動は、法的には実はまったく根拠のない任意の活動でしかありません。

 もちろん、投票して下さった有権者のご期待に応えるという道義的責任は、全ての議員が背負っているでしょう。しかしそれはまさに次の選挙により選択されるべきことであって、法的な義務ではないのです(なお同時にこれは、どんなに真面目に世の為人の為に頑張っていた議員でも、落選したらただの人という現実の裏返しでもあります。有権者ひとりひとりの選択は、法律よりも重たい。)