古谷経衡(評論家)


 朝ナマといえば何と言っても私の記憶に鮮明なのは「聖徳太子って知っている?」との田原氏発言に生放送中にブチ切れた著述家の四宮正貴氏の放送回(2004年6月25日)である、というのは嘘で、一番痛烈だったのは『激論! 日本はアメリカの属国なのか?!』という回だ。

 資料が手元にあるから引用しよう。放送回は2006年5月26日。出演者は武見敬三(自民党・参)、長島昭久(民主・衆)、小池晃(共産・参)、福島みずほ(社民・参)、下地幹郎(無所属・衆)、青山繁晴、姜尚中、金美齢、志方俊之、村田晃嗣、森本敏、湯浅一郎の面々(所属政党などは当時のもの)だ。

田原総一朗氏=2014年12月22日
田原総一朗氏=2014年12月22日
 10年近く前の放送だが、今でも鮮明に記憶している。「日本はアメリカの属国だってみんなうすうす感じているけど、あえて言葉にはし辛い色々なこと」というウディ・アレンの映画のタイトルのような、長いけれども漠として日本人全部が思い描いていた違和感を見事に番組の中で言葉にしてくれた回だった。

 討論は初っ端からお通夜状態で、「…日本は、アメリカの属国であるということを、認めざるをえない、状況である…」という現状認識をほぼ全員が追認した状況が、最も面白かった。こんなにも「しいん」とする回は珍しかった。

 朝ナマはタブーを斬る討論番組、として開始早々大きな話題となって現在に至っている。田原氏の自伝的著書である『塀の上を走る』(講談社、田原総一朗著、2012年)では、1986年秋に同番組が開始される時の企画目論見について、田原氏自身の言葉で以下のようにある。

”テレビで繰り広げられる命がけのディスカッションなら、間違いなく面白い。その問題に人生をかけてきた人間たちが、本音むき出しの討論を展開する。声の大きさ、激しさ、表情や目の動き、テーブルを叩くパフォーマンスなど、あらゆる表現手段を使っての応酬となるはずだ。”(『塀の上を走る』P.271)

 として、「タブーを斬る解放区」としての朝ナマを明瞭に規定する以上に、テレビならではの視覚効果の妙味を第一に据えた企画であったことが伺える。大学生時代(ゼロ年代前半~中盤)熱心な同番組の視聴者であった私は、当然、冒頭の四宮氏の件もそうだし、いつアズマン(東浩紀氏)がキレて退場するのかをヒヤヒヤしながらも心底待ち望んでいた。