趙甲済(「月刊朝鮮」前編集長)

 韓国と日本が昨年末、慰安婦問題を最終的に解決することで合意したことにより、新たな時代が幕を開けた。今年に入り北朝鮮が4回目の核実験を強行し、韓国政府は米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)の配置をカードに、中国により強力な対北制裁を要求している。その実効性が疑わしい中、韓国では「自衛的核武装論」が台頭している。

金正恩という予測不能な存在


 今回の核実験は、北朝鮮が主張する「水爆実験」ではない可能性が高い。しかし、初の核実験から10年を経た北朝鮮が濃縮ウラン型の核の大量生産態勢を備え、核爆弾を小型化し、ミサイルに搭載できる段階に至ったとする見方は否定できない。増え続ける数十個の核爆弾や、韓国と日本を射程に収める中短距離ミサイルの脅威よりも恐ろしいのは、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記という存在だ。

 米情報機関の分析によると、この30代前半の独裁者は「危険で予測不能、暴力的、誇大妄想的」である。彼が核ミサイルの発射ボタンを押そうとするとき、北朝鮮にそれを止めることができる者はいない。韓国は隣接する敵が核武装をしても、核開発はもちろん防衛網さえ持っていない。日本の防衛網も完璧ではない。

 北朝鮮の核ミサイルの脅威にさらされる韓国と日本が「自衛的な核武装」を試みることができないのは、正常ではない。これは米国が、韓日と軍事同盟を結んで、いわゆる「核の傘」を提供しているためだ。だが、拡大抑止とも称される「核の傘」は、金第1書記がその怖さを分かっていなければ、無用の長物になってしまう。
 韓国の立場から見れば、北朝鮮の核武装を防げない米国の「核の傘」は半分、破れているも同然である。韓国は北朝鮮に対する米国の生ぬるい対応を信じられなくなっている。韓国がそうなのに、金第1書記が米国の「核の傘」を信じようか。つまり「北朝鮮が核ミサイルで韓国の首都圏を攻撃し、国家機能をマヒさせれば、米国は北朝鮮に反撃する。それによって米国は、米国西海岸に北朝鮮の長距離核ミサイルの報復を受けることも覚悟している」-と金第1書記が思わない限り、核抑止力の作動は難しい。核抑止戦略は敵が核を撃った瞬間、終わりなのだ。