韓国の朴槿恵大統領は24日の国連総会での演説で、「戦時の女性に対する性暴力」に言及した。「慰安婦」の表現は使わなかったものの「時代や場所を問わず、人権と人道主義に反する行為」と述べ、間接的に慰安婦問題で日本を牽制(けんせい)したかたちだ。

 今回の演説はこれまでに比べ、対日批判のトーンを下げたとの見方も一部にはある。これについてソウルの外交筋は「世界の多くの国が一堂に会する場で『慰安婦問題』を直接的に語るのはふさわしくない、との判断があったのではないか」とみる。国連総会という注目が集まる場で見苦しさを見せず、「最大限に言い得た表現」(同筋)というわけだ。

 朴大統領は8月15日の光復節(日本の朝鮮半島統治からの解放記念日)の演説で、日韓国交正常化50年となる来年が「両国の新たな出発の年」となるよう日本側に呼びかけた。同時に慰安婦問題の解決を訴えた。

 韓国政府は今月になり、日本に対して対話姿勢を見せ始めており、国交正常化の節目の来年を見据える姿勢が背景にあるようだ。「対日関係が悪化したままではまずい」との声が、韓国政府や政界の一部で聞かれる。日韓両首脳が席を共にする11月の中国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向け、関係改善を進めたいとの思惑もあるようだ。

 ただ一方では、慰安婦問題など「歴史認識」問題に対する韓国の基本姿勢は全く変わっていない。朴大統領は問題解決に向けて「日本の政治指導者の知恵と決断を期待する」と言い続けてきた。この立場では日本に譲歩はしない構えだ。国連での演説で、あらためてその姿勢を見せた。

(ソウル・名村隆寛)