小幡績(慶應義塾大学ビジネススクール准教授)

 いよいよ終わりの始まりが始まった。それは日銀のマイナス金利で始まったのである。

 もちろん、日銀のマイナス金利は象徴に過ぎない。最後のとどめを刺しただけで、一つのきっかけに過ぎない。根本には世界的に異常な過剰金融緩和がある。中でも量的緩和は、金融市場の礎石を破壊することにより、根底から金融市場を崩壊させた。

 現在の金融市場混乱の原因は、銀行システム不安である。昨年8月から9月の暴落、今年年初からの暴落の要因は原油暴落であり、リスク資産市場の一部の問題だった。今度は、原油から銀行に移った。リスク資産市場のバブル崩壊、値付けの誤り訂正という些末なものから、銀行萎縮による実体経済の不況、経済全体の地味な危機に移ったのである。
世界経済の減速懸念で東京金融市場は円高株安が急速に進んだ=2月12日午後、東京都港区の外為どっとコム
世界経済の減速懸念で東京金融市場は円高株安が急速に進んだ=2月12日午後、東京都港区の外為どっとコム
 原油の暴落は深刻だが部分的である。一時的な不安は広がるが、経済全体を壊すことにはならない。なぜなら、原油価格下落の影響は一義的にはプラスマイナスゼロで、産油国、資源輸出国にはマイナスだが、輸入国にはプラスであり、米国、日本の二大経済圏を始め多くの経済が恩恵を受ける。ただ、相対的に強い米国、日本が得をして、資源国という基盤の脆弱な国々が打撃を受ければ、間接効果を含めれば、世界全体ではマイナスになる。なぜなら、弱いモノは打撃で壊れてしまい、壊れることによるコストは大きいからだ。しかも、企業間競争により劣った企業が淘汰されるべき、という競争原理とは異なり、それぞれの経済が存在する社会が不安定になるだけだ。世界はより不安定になるから社会的にも大きなマイナスになり、地政学リスクも高まるのだ。

 さらに資源国や資源開発プロジェクトを行っている国や企業が打撃を受けることは経済に大きな影響を与え、原油安によるプラスの恩恵を大きく上回るマイナスとなる理由は、彼らが借り入れでプロジェクトを行っているからだ。いわば実力以上の投資を行っており、その無理を支えているのが投資家で、輸入国のプラス1と輸出国のマイナス1に加え、輸出国のマイナス1は借り入れというレバレッジによりマイナス2にも3にも被害は膨らむからだ。

 この資金供給を担っているのは金融市場と銀行であり、金融市場と銀行がダメージを受ければ、危機は資源・原油と関係のないセクターにも広がる。経済全体の危機となる。銀行融資が焦げ付けば、その分資本を補うために、他へのリスクのある融資を減らすことになる。この結果、健全でまっとうなビジネスを行っている企業、とりわけ中小企業が影響を受け、経済は縮小均衡に陥り、不況になる。新興企業も同様で、こちらは銀行ではなく金融市場の収縮により、真のリスクを取る資金が縮小し、例えば上場が難しくなり、ファンドの出資も得られにくくなる。実体経済のリスクをとった実物投資が行われなくなり、縮小均衡へ経済は陥る。