篠原章(評論家・批評.COM主宰)

 7月に行われる参院選挙(比例区)に、SPEEDの今井絵理子氏が自民党から出馬することが話題になっている。2月9日に自民党本部で開かれた記者会見では、聴覚障害を持つ長男の存在が背中を押したと述べ、「明るい希望をもてる社会」をつくりたいと決意を語った。

 自民党本部には、若い世代にも知名度の高い今井氏の擁立によって若年世代浸透したいという思惑があるらしいが、狙いはそれだけではないという。今井氏の出馬が、翁長雄志知事の「オール沖縄」に打撃を与える、つまり沖縄県民の「辺野古反対」を弱める効果があると考えているようだ。

 すでに「オール沖縄」の退潮は始まっている。1月24日に行われた宜野湾市長選で、翁長雄志知事の「オール沖縄」が支援する志村恵一郎候補が、6000票もの大差で現職の佐喜眞淳候補に敗れている。近年の宜野湾市における選挙の動向を見ると、共産党、社民党、社会大衆党(地域政党)といった「革新系」の得票は最低で約17000票、最高で約22000票となっている。投票率の高低に配慮しても、翁長氏の応援による得票はせいぜい3000票程度である。つまり、選挙の敗因は、保守系有権者をまとめきれなかった翁長知事側にあることは明らかだ。この選挙結果を、県内世論が「辺野古反対」一辺倒から変化しつつある兆候と捉えてよいだろう。 

 選挙以降、「辺野古反対」「翁長支持」の県民世論をリードしてきた沖縄タイムス、琉球新報の筆致にも元気がないが、県内二紙も世論の動向をじっくり観察する段階に入った可能性が高い。
沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認をめぐる代執行訴訟の第4回弁論の開廷を待つ翁長雄志知事(左端)ら=2月15日、福岡高裁那覇支部(代表撮影)
沖縄県名護市辺野古の埋め立て承認をめぐる代執行訴訟の第4回弁論の開廷を待つ翁長雄志知事(左端)ら=2月15日、福岡高裁那覇支部(代表撮影)
 目下審理中の国による代執行訴訟でも県側の敗色は濃厚で、裁判所による、県に対して温情的な「和解案」も決定打とはなりにくい状況だ。県側は「工事中止・国との話し合い継続」という和解案に前向きだが、国は和解よりもむしろ判決を期待している模様で、両者の和解協議が成り立つのかどうかも微妙な情勢である。「知事と政府とのあいだで、すでに和解について合意が形成されている」という観測もあるが、国の対応を見るかぎり和解決裂に至る可能性が強い。万一、和解が成立した場合は、それがどんな内容であっても「オール沖縄」は崩れ去るだろう。