猪野 亨(弁護士)

 この間、飲酒について、いろいろと意見を書いてきましたが、アルコールに負けず劣らず害悪をまき散らしているものにタバコがあります。

 アルコールは、飲むことによって周囲に迷惑を掛ける、飲酒の強要などの問題がありますが、タバコは、日常的に煙をまき散らし、タバコを吸わない人にとっては、とても迷惑なものです。

 昨今、喫煙率が下がってきたことは、まことに喜ばしいことです。

 このタバコについて、目から鱗が落ちる思いをしたのが、「タバコを吸っていいですか?」というセリフについてです。

 それは、このセリフについては、言わないで吸うよりも配慮はあるのかもしれないが、むしろ嫌とは言わせないためのもの、という指摘でした。

 その指摘を聞いて、なるほどと思いました。

 私が大学生の頃(今から25年前です)、同じ学生でタバコを吸っている学生から同様の趣旨のことを聞いたことがあります。

 タバコを吸っていいかと聞くようにしている、断らないということを承知で聞いているし、どうぞというから堂々と吸えると。

 確かに、吸わない人に対する配慮ではありません。

 相手が断れないだろうということにつけ込んでいるだけです。このようなものは気遣いでも何でもありません。

 喫煙率が80%とか圧倒的多数が吸っている状態、吸って当たり前の状態の中では、このようなセリフは「配慮」になるのかもしれませんが(それでも気休めです。ダメならダメと言える雰囲気の中で聞かなければ全く意味のないセリフです)、少なくとも、今の時代では「配慮」にすらならないのです。

 先日、札幌市営地下鉄でのことですが、ホームでタバコを堂々と吸っている男がいました。

 私としては既に地下鉄に乗っており、発車を待っている状態だったため、どう対応すべきなのか思案していました。穏当なのは駅員を呼ぶことでしょう。

 しかし、現在、地下鉄などではラッシュ時でもない限り、駅には駅員がいません。だからこういう不埒な者が出現するのかもしれません。

 その男の行動から目を離さず、見ていました。そのまま列車に乗り込んでくるのではないかと思ったからです。それはさすがに黙認できません。

 と思ったら、火を消して1つ先の車両に乗り込んできました。

 自分でもどのような行動を取るべきかと思案した経験でした。

 今の時代、よく見かけるニュースがこのような喫煙者(携帯利用者である場合も多い)を注意した人が殴られ、殺される(罪名は傷害致死とされます)事件です。

 報道の仕方も、注意したことによりトラブルとなったみたいな表現がなされることがありますが、いかにもケンカ両成敗的な表現です。本来的に喫煙してはならない場所で喫煙をしていることの方が問題行動であり、注意した人が非難されるいわれはありません。

 こう言っては何ですが、今の時代に喫煙禁止場所で喫煙ができる者というのは、人格的に問題があることが多く、直接、関わらず公の機関に委ねるべきとも思いました。

 「タバコを吸っていいですか?」という前に、周囲に迷惑を掛けないところで吸える場所を探しに行きましょう。どこかの席についている場であれば、自身がその席を離れてましょう。それがせめてもの喫煙者の配慮です。

 もっともこのセリフ、最近では、あまり聞かれなくはなった気がします。

 1つは最初から吸えるところに行く常識派。

 もう1つは、そもそも吸って当然という非常識派。

 この2つに二極分化してきたのかもしれません。


2015年1月2日「弁護士 猪野 亨のブログ」より転載