USJのビジネスモデルで特筆すべきは、よくも悪くもプライシング戦略の巧妙さだろう。

 基準になるのが1デイ・スタジオ・パス。毎年のように値上げされると揶揄されるこのパスが現在は税込で7400円。ちなみにこの2月から200円値上がりしてこの価格だ。しかもものすごい数の来場者数のおかげでこのパスだけではなかなか目当てのアトラクションには乗ることができない。
 その際に、ふたつ選択肢がある。

 ひとつは待ち時間を格段に短縮できるロイヤル・スタジオ・パスを22620円で購入すること。このパスならエクスプレス・パスの短い待ち行列に並べるし、大混雑で入場すら難しいハリー・ポッターエリアの入場確約券もついている。これは中国から爆買いにやってきた富裕層などにはぴったりのチケットだ。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「The Wizarding World of Hally Potter」=大阪市此花区のユニバーサル・スタジオ・ジャパン
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの「The Wizarding World of Hally Potter」=大阪市此花区のユニバーサル・スタジオ・ジャパン

 もうひとつの選択肢は年間パスの購入。実はUSJは年間パスが実に安い。GW、お盆、クリスマスなど何か所かの入場除外日を含む年間パスであれば19800円で購入できる。これなら3回行けば元がとれる。東京ディズニーリゾートの場合は年間パスポートが2パークで86000円、ディズニーランドかシーのどちらか片方だけのパスポートが59000円だから、いかにUSJの年間パスが安いかがわかる。

 これはつまり、地元の人は年間パスを買って、混んでいない日やすいている時間帯を狙って何度も来てくださいという方向へ顧客を誘導しているのだ。

 結局、地元の客はリピーター化するし、一生に一度のつもりでやってくるインバウンドの外国人顧客は高額のチケットを買ってくれる。このプライシング戦略が経営の玄人筋からは絶賛され、一般市民からは非難の声があがる火種にもなっている。

 なぜUSJは絶好調なのにさらに値上げしているのか? これはディズニーランドでも同じ傾向がみられるが、根本の部分にはUSJやTDLがロイヤリティーを支払うアメリカの提携元が本国のロイヤリティーを要求する方々がドル建てで利益計画を考えているということがある。

 円安の場合になると、ユニバーサルやディズニーのようなアメリカ企業から見ればロイヤリティー単価を上げていかないとドル建てで見た収益は減少してしまう。ある意味でUSJの価格が上がるのと、iPadなどのアップル製品の価格が年々上がるのは、根本に「仕入れ値がドル建てだから」という事情があるのだ。

 しかしその説明は「生活弱者はパークに来るなというのか!」という批判に対する解決策にはならないだろう。今のところUSJがこの問題にどう向き合うのかは今後の課題だ。

 ただこの問題、アメリカのディズニー本社はかなり前にある明確な回答を打ち出している。パークに行けない子どもたちのためにアメリカ国内にたくさんのディズニーストアが作られたのだ。アメリカのディズニーストアのぬいぐるみやシャツはパークのお土産よりも安く売られている。

 それも買えない子どもたちもいる。ならばウォルマートに行けばディズニーキャラクターのTシャツが手に入る。作りは悪くても価格はさらに安い。ケーブルテレビでディズニーアニメも見ることができる。つまり貧富の差が大きいアメリカで、ディズニーはどの所得階層の子どもにも選べる商品やサービスを供給する努力をしているということなのだ。