TDRが「夢の世界」を徹底的に守ろうと、コンテンツもホテルも自社で囲い込む戦略をとることに対して、USJは多くの協力者を巻き込み、彼ら自身にも自主的に発信してもらうことによって、魅力を高めようとしてきたのだ。

 このように「巻き込む力」を活用した手法が成功しやすいのは時代の流れでもある。2015年に公開された「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」。このプロモーションでは、アート引越センター(アートコーポレーション)、Schick(シック・ジャパン)、セキスイハイム(積水化学工業)、南海電鉄、そごう・西武など数多くの企業とのコラボレーションが実施された。また、2014年に大ヒットを巻き起こした「妖怪ウォッチ」も映画、テレビ、玩具、企業タイアップなど多面的なプロモーション展開を行ったことで一大ブームにまで発展した。「スター・ウォーズ」「妖怪ウォッチ」とも、多くのコンテンツやメディアを巻き込むことで、大ヒットにつながったと言えるのだ。

 「巻き込む力」が重要でも、いきなり大きな仕掛けをすることは難しい。USJは、その時々で、目標を明確に定め、実現可能なプロモーションを企画し、仕掛け続け、成功させ続けてきた。かつて、倒産しかけ、マイナスからのスタートとなったUSJには、人気コンテンツをアトラクションに出来る予算もなかった。したがって、まず最初に、コストのかからないプロモーションが考えられた。ハロウィン・ホラー・ナイトというゾンビイベントを実施したり、ジェットコースターを改良し、後ろ向きに走らせたりした。それらが成功すると、一つ、また一つと新たな企画を考え、徐々に人気コンテンツを誘致してきたのだ。

 現在の大人気アトラクションである「ハリー・ポッター」を誘致すれば、多くの来場者が見込めることは、USJの中の人のみならず、誰もが思いつくアイデアである。もちろん、USJでも、かなり昔から考えられていたと言う。しかし、それはいきなり出来ることではない。小さな成功を重ね続け、一つ一つ階段を上がらなければ、総工費約450億円の「ハリー・ポッター」アトラクションの完成など夢物語だったのだ。このように、USJが成長し続けている裏には、単に魅力あるコンテンツがあるだけでなく、着実な経営戦略があるのだ。

あらい・やすし マーケティングコンサルタント。大手広告会社にて国際的なエレクトロニクス企業のアカウントを統括し、アジアパシフィック地区のディレクターを経験。数々の競合コンペによるアカウント獲得により、最高賞を含む社内表彰多数受賞。約15年の勤務後、外資系メディア企業にて広報関連のコンサルティングサービス業務のマネージャーに就任。2007年株式会社ホワイトナイトを設立。