日本ダルクは薬物依存からの回復に取り組んでいる民間団体で、1985年に近藤恒夫代表が西日暮里に開設した東京ダルクから発展したものだ。近藤さんは94年にそこを別のスタッフに任せて沖縄に渡り、沖縄ダルクを開設。97年には高知ダルクを開設して、98年に再び上京して、日本ダルクを開設した。
 ダルクはスタッフが独立する形で各地に設立され、現在は全国で約60カ所に及ぶ。総本山というべき日本ダルクは、クリニックや弁護士事務所まで併設し、近藤さんがその代表を務めている。各地のダルクは、それぞれの代表に任せており、法人ではあるが独立採算制になっている。

  「僕はピラミッド型組織が嫌いだから。ダルクは誰がやってもいいんです。たぶん、それがダルクが各地に広がった理由じゃないですか」(近藤代表)
日本ダルクの近藤恒夫代表
日本ダルクの近藤恒夫代表

 薬物依存となってダルクに入寮する場合は毎月16万円を負担する。薬物の誘惑を断ち切るために、一人暮らしをやめ、ダルクで共同生活を送りながら回復のプログラムに参加する。16万円のうち6万円がダルクから生活費として本人に支給される。子どもが薬物依存となった場合は、入寮費は親が負担することが多いが、成人の場合は生活保護受給者も少なくない。16万円という金額は生活保護受給額を基準に決められているという。

 ダルクの特徴は、近藤さんを始め、スタッフが基本的に元薬物依存者であることだ。患者がスタッフとしてフォローする側にまわる。つまり互助的な組織だ。
 「実際に経験した者がアドバイスしてくれるから説得力も増すし、患者が回復すればスタッフに回ることで雇用が生まれる。それがよいことですね」(同)
 芸能人などが薬物所持や使用で逮捕されると、テレビでコメンテイターが「刑務所に送って厳罰に処すべきです」とコメントする。しかし、これは、日本社会が薬物依存に対する理解が足りないことの現われだ。薬物依存はある種の病気だから、治療をせずに2~3年刑務所に閉じ込めておくだけでは、出所後、再犯に至るという悪循環を断ち切るのが難しい。

  「刑務所に入っても悪化させるだけです。薬物依存は基本的に社会内処遇、つまり社会で治療を受けて治さないといけないのです。でもそのことへの理解が足りず、昔は裁判で治療の必要性を主張すると、裁判官が『ここは治療でなく裁く場なのだ』と言うこともありました。さすがに今はそういう裁判官はいませんが……」(同)