1日に放送されたテレビ朝日系「朝まで生テレビ!」に観覧者として出演していた大森昭彦大田区議会議員は、自民党所属であることを隠し、
敢えて「建設板金業」の肩書きでもって、自民党安倍政権を持ち上げる発言をしました。

 立場を明らかにしないのは、あからさまなやらせ発言としてネット上でも批判の声が多く上がっています。
 驚いたことに、当のご本人は、全く無反省です。


「「朝生」で肩書伏せて観覧し意見述べた大田区議「言う必要はない」」(スポーツ報知2016年1月2日)

「自分は、工場の経営者として観覧したので、言う必要はないと考えていました」と答えた。「出演は問題ないと考えているか?」との問いには「はい」と断言した。」

「大森氏は「下心を持って番組に参加はしておらず、国の政策が地方にどう関わっていくのかを知りたかった」。今後も、声が掛かれば観覧をしたいと考えているという。」

 ここまで問題状況がわかっていないとはすごいと思います。
 大森氏の発想は、自分は自営業者である、自営業者として経済政策について意見を述べた、その内容についての嘘偽りはない、政権を持ち上げるという意図もなければ自分が感じたことを述べたのだから問題ない、ということなのでしょう。

 しかし、どの立場で発言するのかは極めて重要な場合があります。かつて問題になった原発問題に関して、九州電力が関連会社の社員らにやらせメールを送らせていたことが暴露されたのが2011年でした。
 経産省が主催した「佐賀県民向け説明会」が生放送される中で、九州電力が関係会社の社員らに玄海原子力発電所2、3号機の再稼働を求めるメールを送らせていたというのですから、非常に悪質でした。
 県民の意向が歪んだ形で表れるからです。

 大森氏のやったことは、これと同じレベルです。
 立場を隠すということは、見ている側、聞いている側にとっては、その人はあたかも「中立」という立場から判定しているように見えてしまうし、その誤解(錯覚)があることを知りながら敢えてその手段(肩書き)を選択しているのです。
 従って、この大森氏のやったことは大問題であり、品格が問われるというべきものです。
 もっともこの大森氏は、「アベノミクス」についての効果については否定する発言をしていました。

「『朝まで生テレビ』に自民党区議が一般人装い出演! でも“自民党のサクラ”もアベノミクス効果は完全否定(笑)」(リテラ2016年1月3日)

「上がっているという印象はないです。私だけではなくて、同業の人たちに聞いても、上がっているという印象はないかなと思います。やはりコストがかかったりしているところが波があるので、平均に慣らすと、やはり利益が上がっているという印象はちょっとないんじゃないか」

「私の場合は街場の業者なんですよ。ゼネコンの方達と取引している業者とまあちょっと違うので、構造的にちょっと違いがあるので」

「われわれの業界だけでいうと、(アベノミクスは)あまり効果的には伝わってないって印象ですよね」

「直接アベノミクスというところでは、あまり感じてないんです、われわれは」

 その意味では大森氏にとっては、正直な回答なのであり、持ち上げたという感覚ない、内容に問題はないということにつながるのですが、しかし、やはり自民党政権か民主党政権かという政権評価、そして自民党に軍配を上げた発言だからこそ問題なのです。

 政権評価には、この「アベノミクス」の効果が関連して来ないのあれば、安倍政権の政策によって「民主党政権の時よりは、よくなったかなと、そういう印象はあります」ということには飛躍が出てきますし、立場を知れば誰もが持ち上げているという評価をするわけです。
 そして、本当にそれが政権の違いによる効果であるならば、「だからオレは自民党なんだ」と言えばよいことです。
 従って、大森氏が行ったことを正当化できる余地はありません。

 とはいえ、観覧者にこのような自民党現職区議であることを知りつつ、その肩書きを隠して出演させていた局側が一番、ひどいと言えます。

「今回もディレクターから依頼を受けて知人と観覧。ディレクターは、大森氏が区議であることを知っていたという。」(前掲スポーツ報知)

 私も先日、この弁護士会主催のパレードに参加しました。

 この会場で私は朝日新聞の記者にインタビューを受けたのですが、最初に自分は弁護士であり、この会の主催者側なので不的確であることを伝えました。もちろん、その後のインタビューはありません。そうあるべきものだと思います。単なる一参加者としてインタビューを受けるべきではないからです。
 その登場させる人物の立場をわかりながら、それを敢えて秘匿し、それを1つの「声」として伝えることは、内容がどうあれ公正性に疑問符がつくのは当然です。
 その意味では大森氏も同罪です。

 今回の問題で、テレビ朝日、自民党はどのように対処するのかが問われます。曖昧にしてはいけません。
弁護士 猪野 亨のブログ 2016年1月3日分を掲載)