5歳の女の子が一時意識不明の重体となった「中国製毒餃子(ぎょうざ)事件」の被害が拡大している。毒物の混入や不衛生さから中国製品が世界各地で問題を起こし続けており、今回の事件も単なる中国の一企業の問題とは思えない。
 福田康夫首相(71)は、事件を中国の構造問題ととらえた方がよい。中国産食料品や医薬品の輸入の一時停止に踏み切り、事態の抜本的改善のため対中交渉に乗り出すべきではないだろうか。1月の国会での施政方針演説で「今年は生活者や消費者が主役となる社会へ向けたスタートの年」と宣言した首相だが、国民の生命と健康を守る言行一致のリーダーなのかどうかが問われている。

首相は真剣か

 中国がらみの「安全」の問題はあまりに多い。2004年には、中国製の「ダイエット用健康食品」を服用し、岩手県の30歳の女性が亡くなった。06年にはパナマで、中国製偽造薬を使って製造された咳(せき)止め薬で、幼児ら多数が死亡する悲惨な事件が報じられている。
 福田首相は1月30日夜、首相官邸で記者団にこう語った。
 「被害が発生したということで大変お気の毒に思います。お見舞い申し上げますけどね。しかしこういうことが起こりまして残念ですね。どういうふうにしたらいいかね。関係省庁が原因をよく調べた上で対応すると思いますけどね。そういう態勢をね、また考えることがあるんであれば、至急対応しなきゃいかんですね」
 「首相として具体的に指示するつもりは」との質問が飛んだ。
 「いや、厚生行政…経済産業省、いろいろ省庁ありますんでね。ですからそういうようなことが起こらないように、まあ輸入食品といえどもですね、十分注意するというようなことを申し上げるしかないですね。とりあえずはね。原因が分かってから対応するということが必要なんでしょう」
 事件への強い憤りは伝わってこない。中国への言及もなかった。
 首相は1月31日の参院予算委員会でようやく、「私が訪中した時に、温家宝首相と食品の安全は両国共通の課題だと話し合って、残留農薬の検査技術の研修実施を表明した。今月中旬、この問題をフォローする調査団を派遣した。まだ報告は聞いておりません。そういう前向きな取り組みをしている。今回の問題もそういう枠組みの中でも話し合いを進められる」と語った。
 食品検査は大事だが、食の安全は、そのようなレベルの問題にとどめていいものではないだろう。

構造改革を迫れ

 「何をやりたいのか見えてこない」といわれる首相だが、今回の事件は、国民のために先頭に立って働ける絶好の機会のはずだ。それなのに、省庁任せの感がぬぐえないのはなぜだろう。
 国内の悪徳業者による事件なら、警察や厚生労働省、自治体などで対処できる。だが、今回の相手は、「法治」ならぬ「人治」国家といわれ、近代的なルールを十分身につけているとはいえない中国政府と中国社会そのものだ。日本政府が総力をあげて改善を迫らなければ、被害は必ず再び起きる。
 日本の首相自身が真っ先に、明確な憤りの声を相手に伝え、政府・与党をリードして、中国政府との協議に乗り出すことほど効果的な対策はないはずだ。
 国民が政府を擁し、時に「首相」に敬意を払うのは、難しく嫌な仕事に率先して取り組んでもらうためでもある。
 舛添要一厚生労働相(59)は1日の参院予算委で、輸入禁止措置を定めた食品衛生法8条について「発動もあり得る」と述べたが、憤る世論のガス抜き的な発言に終わらないことを期待したい。
 日本人の死者が一人も出ていない段階でも、牛海綿状脳症(BSE)感染牛の発見で、米国産牛肉は長く輸入が停止された。これくらいの熱意で、中国産品の脅威から国民を守る気概を首相に期待するのは、無い物ねだりだろうか。
(政治部 榊原智)