井上和彦(ジャーナリスト)

 「特殊部隊の兵士は、1人で1個中隊(約200人)に相当する戦力を持つといわれています。現在の不安定な朝鮮半島情勢を考えるとき、またすでに日本国内に潜伏しているといわれる北朝鮮の工作員に対抗するためには、この特殊部隊が必要であり、専守防衛を掲げる日本にはもっとも適した部隊なんです」

 元米陸軍特殊部隊グリンベレー水中作戦戦隊長の故・三島瑞穂氏は、かつてこう語った。

 高度な戦闘訓練を受けた特殊部隊の兵士らが大都市で公共交通機関や商業施設を狙ったテロを行えば、都市はたちまち大混乱に陥るだろう。生物・化学兵器を用いた無差別攻撃となれば都市機能は完全に麻痺し、日本経済に深刻な打撃を受けることになろう。

 昨今、こうした特殊部隊によるゲリラ攻撃や市民を巻き込んだ無差別テロの危機が高まっている。

 そんな安全保障環境の変化に対応すべく防衛省は、各部隊で対ゲリラ戦闘訓練を実施すると共に新たに高度な戦闘技術を持ついわゆる「特殊部隊」を編成してきた。

 中でも特に知られているのが陸上自衛隊の「特殊作戦群」だ。

 この部隊は対テロ・ゲリラ専門の特殊部隊として編成(平成16)されたが、その任務の特性上、部隊編成や装備などが公開されておらず秘密のベールに包まれたままである。

 編成完結式ではじめて写真が公開されたが、これまでの自衛隊の戦闘服とはまったく異なる黒い制服に身を包み、しかも隊員の顔は一切写っていない。だが現在判明している情報を総合すると、この部隊は世界一の特殊作戦能力を有する対テロ専門の米陸軍特殊部隊デルタ・フォースに学んでいるといわれており、個々が極めて高い戦闘能力を備えた精鋭隊員約300名で構成されている。隊員数は少ないものの、個々の戦闘能力は極めて高く、市街戦闘や水路潜入、そして落下傘降下などいかなる作戦行動にも即応できるよう訓練されているという。

 陸上自衛隊には、この特殊作戦群のほかに、国際任務やテロ・ゲリラに即応対処する「中央即応連隊」がある。

 約700人で編成されたこの部隊は、国内のテロ・ゲリラおよび災害への即応のみならず、PKOや国際緊急援助活動などの海外派遣任務に対する即応部隊であり、ソマリア沖の海賊対処行動のためジプチに展開する海上自衛隊航空部隊を護衛するために派遣されている他、ハイチ大地震災害(平成22)への国際平和協力活動にも先遣隊として急派されている。

 こうした特殊部隊の基礎となっているのが第1空挺団だ。

 この部隊は、3個普通科(歩兵)大隊(合計約1200名)を基幹として、施設(工兵)中隊、通信中隊を併せ持つ。これまで自衛隊最強部隊といわれてきた第1空挺団は、緊要な時期と場所に航空機によって機動し、落下傘をもって人員・資材を降・投下させて作戦を遂行する“空挺レンジャー部隊”であり、即応能力が求められる現代戦には不可欠の高機動部隊なのだ。

 そしてこれらの特殊部隊を束ねたのが「中央即応集団」なのである。

 中央即応集団とは、前述の「特殊作戦群」「第1空挺団」「中央即応連隊」のほか、NBC兵器への対処を専門とする「中央特殊武器防護隊」、兵員の空中機動を支援する「第1ヘリコプター団」などによって構成された、総勢約4200人のエリート部隊なのだ。