山本一郎(ブロガ―・投資家)

 ビジネスというものは単体で存在するものではなく、社会や文化、そこで暮らす人たちの価値観から出てきた組織といった、ある意味でその地域、その国家の総体が作り上げるものであろうと思うわけです。


 私自身は、年の三分の一ぐらいは海外で時間を過ごしていますが、日本国内で頻繁に起きるであろう議論、例えば「日本から何故優れたイノベーターが出てこないのか」とか、「日本でAppleのような企業はなぜ生まれないか」などといった話が、海外から見るとまったく逆に「日本企業のように組織だって一致団結して仕事をするにはどうしたらよいのか」という相談を受けるケースが多いのです。
国内通信大手3社が一斉に発売した新型スマートフォン「iPhone6s」などを手に記念撮影に応じる購入者ら
国内通信大手3社が一斉に発売した新型スマートフォン「iPhone6s」などを手に記念撮影に応じる購入者ら

 隣の芝は青いのか、岡目八目の類なのかは状況によって変わりますが、日本企業にはそれぞれの強みがあり、それを活かして利益を上げ、世界市場で戦っていることはそれだけでまずは立派なことです。その上で、より高みにある企業として、AppleやGoogleのような世界的大企業に比べて日本企業の弱さ、脆さ、いけてなさを日本人が勝手に実感しているだけのことなのかもしれません。

 例えば、昨年コンテンツ系事業の投資の仕事で欧州に足を向けましたところ、日本では独創的な作品が次々と生まれる土壌があり資金が集まって綺麗なエコシステムが完成していて羨ましいと言われるわけです。日本人からすると、アニメ業界やゲーム業界の人たちの低賃金がクリエイターの疲弊を生み、社会問題になる傍ら、独自のコミュニティが同人系のネットワークを作り上げて切磋琢磨し、コンテンツに磨きをかけていきます。その結果として、構造的に若者の娯楽としての同人、二次制作に人気が集まり、若い人も途絶えることなく制作市場に流入しているという状況にあります。