大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 韓国政府が日本人観光客230万人の誘致に向けてのイベントをはじめるといいます。昨年、日本は訪日外国人観光客が47.1%増とさらに伸びたのですが、韓国はそれとは対照的に、外国人観光客が6.8%減となり、7年ぶりに日本に逆転されてしまったのです。事態の打開をはかりたいということでしょう。昨年、日本から韓国を訪問した観光客が184万人なのでかなり高い目標です。
 もちろん、昨年はMERS(中東呼吸器症候群)の流行で大きな打撃を受けたこともありますが、では海外からの観光客がすんなり戻ってくるかというとかなり疑問です。

 ひとつの理由は、日本と競合関係になってきたことです。

 これまでは、日本は円高もあって観光先としての注目度があまり高くなかったのですが、円安とビザ緩和によって、それが一変しました。そうなると、旅行先の体験の魅力度や満足度で、観光客の吸引力で差がついてきます。

 ところが、訪韓数でもっとも多い中国人観光客の満足度がいまひとつのようです。

 韓国観光文化研究院のデータによると、2010~2013年の中国人観光客の満足度は、調査した16カ国中14位、「また来たい」と答えた割合も14位だったと報じられています。

 どうも、安いツアーを売りにしているために、コストの安いレストランを使うことが満足度を下げているようです。

 また、一昨年のセウォル号事故、昨年の高速鉄道のトラブル、また大韓航空のナッツ姫問題などで社会の未熟さを印象づける出来事が相次いで起こったこと、また経済成長に急ブレーキがかかり、国としての活気を失ったことも韓国の魅力を大きく低下させているのだと思います。

 そして、昨年訪韓した日本人観光客がなんと19.4%減と、日本からの観光客が激減してしまいました。韓流ブームがピークアウトしたこともあるのでしょうが、あれだけまるで国中がカルトにはまったようにメディアが煽り、慰安婦問題で反日キャンペーンを繰り返したのですから、韓国とは関わりたくないという心情になった人が増えたのも当然です。自業自得というか排外主義に走ってしまったツケといわざるをえません。

 感情に任せ、怒りをぶつける。怒りの感情を煽って、高揚感にひたるうちに、韓国社会全体が、まるで反日カルト、慰安婦カルトに陥ってしまったように見えます。その代償として日韓の国民感情の間に自ら溝を深めてしまったのです。以前指摘しましたが、韓国は朝鮮戦争やベトナム戦争当時の慰安婦問題や集団レイプ問題などの時限爆弾を抱えているので、慰安婦問題を言えば言うほどリスクを背負います。

 慰安婦問題では、日韓政府が合意したものの、いったん洗脳を受けたひとびとが冷静にものごとを判断できるようになるには時間を要するのではないでしょうか。学術書「帝国の慰安婦」の朴裕河(パク・ユハ)世宗大教授が在宅起訴され、給料が差し押さえられるというのが現実です。

 韓国は時代の節目にさしかかったのだと思います。経済も、日本が数十年前に迎えた高度成長期の終焉にようやくさしかかったばかりです。これから成熟した国への道を歩むのでしょうが、社会や文化の成熟は、追いつけ追い越せのハングリー精神で実現できるものではありません。

 日本からの訪韓観光客を取り戻そうと、韓国政府が高い目標をかかげてキャンペーンを行うことを通して、これまで韓国が行ってきたことが、いかに自らの国家を辱めてきたか、また負の遺産として残ったかという現実に気づけば、また韓国にも違った対日外交の道が見えてくるのではないでしょうか。