河合雅司・産経新聞論説委員

 「夫婦に子供2人」という長年にわたる日本の世帯モデルが、過去のものになりつつある。

 6月に発表された平成22年国勢調査(抽出速報)によると、1人暮らし世帯が全世帯の31・2%を占め、初めて3割を突破。夫婦と子供の世帯(28・7%)を抜いて、最も多い家族形態となった。

 少子高齢化の進行に伴って大きく変わる家族像。われわれは新たな難題を突き付けられている。

「孤立」拡大の懸念

 1人暮らしが増えたのは突然ではない。平成7年には25・6%と大きな存在となっていた。

 なぜ、1人暮らしは増え続けるのか。要因は大きく2つだ。1つは子供と同居しない高齢者が増大したことだ。国勢調査によると、65歳以上の15・6%にあたる457万7千人が1人暮らしである。内訳は女性が327万1千人、男性130万6千人。高齢女性の5人に1人、男性は10人に1人という計算になる。

 もう1つは未婚者の増大である。男女ともほぼすべての年代で未婚率が上昇している。22年の生涯未婚率は男性19・4%、女性9・8%。7年には8・99%と5・1%だったから、その急増ぶりが分かる。

 別々に見える2つの要因だが、実は関係が深い。未婚の若者もやがて高齢者となるからだ。若い世代の未婚の増大は、将来の1人暮らしの高齢者の増大につながるのだ。

 今後は、配偶者との死別や離婚に加えて、「若い頃からずっと独身」という人が増える。政府の推計では、そもそも高齢世帯が増大する。15年後には世帯主が65歳以上の世帯が約1900万に及び、その7割が1人暮らしか高齢夫婦世帯になるという。

 1人暮らしの高齢者が増えると、身の回りの不自由さや、孤立が懸念される。要介護状態に陥ったり、病気で動けなくなっても、手助けしてくれる親族が近くにいるとはかぎらない。近所に商店がなく“買い物難民”になったら死活問題ともなる。都市部では死後何日もたって発見される「孤独死」が珍しくない。

 さらに不安なのが、認知症高齢者の増大だ。推計では、団塊世代が75歳以上となる平成37年に高齢者人口が約3500万人となるが、そのうち認知症高齢者が320万人を占める。おおよそ高齢者の10人に1人が認知症という社会の到来である。このまま行けば、社会コストの増加が計り知れない。

低家賃ケア住宅を

 どう対応すればよいのだろうか。暮らし方は個人の意思・選択であり、いま1人暮らしの是非を考えても仕方ない。だが、高齢者の孤立を防ぐための見守り態勢づくりは急がなければならない。

 すでに地方自治体などが、地域ぐるみでの見守りや高齢者が参加しやすい交流の場をつくる活動に取り組んでいるところもあるが、政府が先頭に立つべきだ。

 少子高齢化で若者が激減していくため、高齢者を見守るための人材確保は簡単にはいかない。特別養護老人ホームなどの施設も、高齢者の急増には追いつかない。

 効果的、効率的な見守り態勢を実現するには、ある程度、集まって住むことだ。そのためには、政府が中心となって、24時間対応の訪問介護と組み合わせた高齢者住宅を大量供給する必要がある。コンピューターネットワークでつなぎ、医療機関などとも連携を図る。

 民間業者によるケア付きマンションなどに人気が集まっているようだが、価格面で折り合いのつかない人も少なくない。政府が用意する高齢者向けケア付き住宅は、利用したい人が気軽に入居できるよう家賃を抑えた大衆向けとする。

 新築にこだわる必要はない。少子高齢化で空き家や大型団地の空き部屋も増えている。中古物件をうまく活用すれば予算は安く上がる。

 人口が増えた時代のような大型開発はだんだん難しくなるだろう。ケア付き高齢者住宅を少子高齢時代の新たな公共事業の柱として位置づければ、内需拡大策ともなろう。

 細分化する世帯がもたらす課題に対応するには、コンパクトな街づくりの視点が欠かせない。