大西宏(ビジネスラボ代表取締役)


 週刊文春が飛ばしまくっています。今回は、自己陶酔し、「酒鬼薔薇聖斗」というふざけた名前で、おぞましい猟奇殺人事件を起こした元少年Aへの直撃取材記事です。よくガス欠しないで突っ走るものだと関心するばかりです。記事タイトルが「元少年Aを直撃! 『命がけで来てんだろ? お前、顔覚えたぞ!』となっているように、文春記者は激怒した元少年Aから恫喝され、追いかけられた切迫感が伝わってくる記事でした。

 元少年Aは、生き残りを賭けてスクープを追う週刊文春の恰好の餌食になったのですが、それはご遺族の感情を無視して「絶歌」を出版した代償だとしても、素顔の写真まで晒すというのは、正義に名を借りたリンチに等しいのじゃないのかという気もします。
被害男児の遺体が発見された現場に供えられた花束
被害男児の遺体が発見された
現場に供えられた花束
 週刊文春の記事は、被害者ご遺族、土師守さんの「少年法を考える上で重要なのは、万引きなどの軽微な非行と、被害者が存在する傷害や殺人などの重大な非行を同列に扱うことは許されないということです。重大な非行に対しては現行の少年法は甘すぎると思います」という言葉を紹介し、「第二の少年A」が出現する前に、今こそ少年犯罪、矯正教育について、国民的議論が必要ではないかとしていますが、その通りだと思います。

 キャスターの長谷川さんは、以前ブログで、誰しもいつ何時、加害者側の立場になる可能性を持っていること、ほんとうに犯罪をなくす、第二の元少年Aを生み出さないためにも出版を行ったことへの安易な批判はよくないとされていました。趣旨は理解できるとしても、いや、そうではなく、やはり批判されるべきだと思います。

 社会が病んできている兆候があり、誰もが加害者になる可能性があるとしても感じるとしても、元少年Aの犯した犯罪のような極端な事例はあまり参考にならないように思えます。なにか、インフルエンザの予防が問われているときに、マラリア病の感染症状を知ったところで何が学べるのかと感じてしまいます。

 ほんとに怖いのは、確率的にも元少年Aのような稀有で極端な犯罪ではなく、もっと日常のなかに潜んでいる、本人も自覚のない、そして回りも見逃しがちな心の病気のほうかもしれません。とくに他の人への気持ちへの無関心や一切無視するという病です。なかなか絶えない、いじめなどの問題がその典型ではないでしょうか。

(2016年02月19日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)