河合雅司・産経新聞論説委員

 日本の少子高齢化は世界最高水準にある。総務省が公表した国勢調査の速報値によると、総人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は23・1%。約4人に1人が高齢者だ。15歳未満はわずか13・2%である。

 少子高齢化は全国一律に進むわけではない。都道府県別の高齢化率は秋田県が30・2%でトップ。島根県29・2%、山形県28・9%が続く。一方、東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏1都3県は20・4~21・0%。大阪府や愛知県も全国平均を大きく下回る。

 ただ、高齢化率だけで「地方で進んでいる」というわけにはいかない。高齢者の増加幅に目を移すと、全く異なる結果が表れるからだ。

 平成17年の国勢調査からの5年間で、最も高齢者が増えたのは神奈川県の34万9千人だ。東京都32万3千人、大阪府31万9千人、埼玉県31万5千人と、巨大都市圏の都府県が上位に並ぶ。最少は徳島県で6300人。高知、鳥取、島根各県も7千人程度増えたにすぎない。高齢者は大都市部で激増しているのである。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2035(平成47)年に東京都は389万5千人で、現在の1・5倍。神奈川県は約90万人増え271万8千人になる。埼玉県約65万人、愛知県約60万人、大阪府は約50万人増える。これに対し、高齢化率の上位3県は、秋田県の2035年は32万1千人で、現在の32万7千人を下回る。島根、山形両県も微減だ。少子高齢化は今後、大都市部で深刻な問題となるのだ。

 なぜ、大都市部で高齢者が大幅に増えるのか。現状において若い世代が多いことが理由だ。若い人の多さは、言い換えれば“高齢者予備軍”の多さである。団塊世代が高齢化し増加数が目立ってきたのだ。

 大都市部は地方から若者を集めることで出生率の低さを穴埋めし、街としての「若さ」を保ってきたが、皮肉にも、そのことが急速な高齢化を呼び起こすのである。

 一方、すでに高齢化が進んだ地方の県においては、亡くなる高齢者も多い。新たに高齢者になる人数と死亡者の人数が同水準であれば、高齢者数は増えないのである。

 大都市部では少子化も加速する。今後は地方の若者が激減するためだ。地方の若者を集め「若さ」を保つ“マジック”は使えなくなる。

 少子高齢化のスピードが速ければ社会は激変にさらされる。例えば、高齢者が激増すれば社会保障費も急増する。高齢者が暮らしやすい街づくりも求められるだろう。しかし、大都市部の多くは若者中心の街づくりを進めてきた。大幅なつくり替えとなれば莫大(ばくだい)なコストがかかる。

 ところが、大都市部では総人口は急速には減らないため、既存の行政コストの大幅削減は難しい。しかも納税者である現役世代が激減する。これでは、高齢者向け政策を展開しようにも財源が確保できない。

 財源問題を解決するには、税金や社会保険料のアップ、行政サービスのカット、あるいはその両方の実施が求められる。しかし、高齢者は長期的に増えるのだから一度実施するだけでは済まない。大都市部に住み続ける限り、負担増とサービス低下が繰り返されることになる。

 少子高齢化問題への対応に追われ続けるということは、それ以外の行政分野に財源を回すことも困難になるということだ。それでは街としての魅力を失う。やがて多くの人が、住みやすい地方を求めて移動することにもなろう。これは、従来の日本の社会構造や日本人の価値観までをも覆す大きな変化へとつながる。

 例えば経済システムだ。これまで大都市部に人口集中させることで生産性を上げてきたが、若い労働力が不足するのだから、こうしたビジネスモデルは通用しなくなる。

 少子高齢時代においては、経済規模で競うのではなく、キラリと光る技術力やブランド力をもった分野を数多く作り世界に発信していく。日本勝ち残りのヒントは、高齢者の増加が頭打ちになる「地方」に眠っているかもしれない。