大西宏(ビジネスラボ代表取締役)

 社会の抱える課題が複雑性を増せば増すほど、従来の発想、また制度手法の限界に壁が生じ、なんらかの新たな切り口を見出し、実行に移していくことが求められれば求められるほど、必要なのは強いリーダーシップではないかと思います。すくなくともビジネスの世界では、リーダーの資質が経営成果の鍵をにぎる時代になってきましたが、政治の世界も同じでしょう。
全国幹事長会議であいさつする民主党の岡田克也代表(奥側左端)。奥側右端に細野豪志政調会長=2015年11月17日、民主党本部(斎藤良雄撮影)
全国幹事長会議であいさつする民主党の岡田克也代表(奥側左端)。奥側右端に細野豪志政調会長=2015年11月17日、民主党本部(斎藤良雄撮影)
 もう保守だ、革新だとポジション遊びにはなんの意味もない時代になってきています。必要なのは問題解決能力です。保守基盤を固めてきた安倍総理が、経団連にまるで労働組合のように、ベアを求めるのは、それが有効かどうかの議論は別にして、そういった過去の遺物の思想からではなく、日本の内需を回復させるために必要だという判断からでしょう。

 時の政権への拮抗力として機能する野党は、政権をチェックし、政治に緊張感をつくりだし、よりよい政策を生み出すためには国民にとっては重要なことです。しかし今の野党第一党の民主党にその重責を担う能力があると思う人は少ないと思います。もう岡田代表は、真面目一徹さがかえって痛々しく感じるほどになってきています。あのいくらなんでも、そんな自虐はありえない、使えないと不評だったポスターは、それにGOサインをだした岡田代表のセンスの悪さ、リーダーとしての資質のなさを逆PRする結果になってしまいました。

 また国会での代表質問も、政権を経験した立場と旧社会党的スタンスの間に揺れ、自ら撃沈するという醜態ぶりでした。

 おそらく現在の議席数、また過去の選挙で獲得した票数などにこだわるあまり、思い切った変革ができない状態に陥っているのでしょうが、政治の世界にもイノベーションのジレンマがあることを感じさせられます。それこそが最悪の状態で、支持率も停滞したままです。
 維新の党を解散し民主党に合流することで最終調整を行っているようですが、風に乗って比例代表で選ばれた根無し草ばかりの議員では、数合わせにしか感じられないのです。

 今の民主党は政権への拮抗力どころか、安倍内閣の支持率をあげる装置としての役割しか果たせていないのです。調査によって、また調査の実施日によって支持率が異なりますが、アベノミクスの賞味期限が切れて経済が停滞し、さまざまな問題が起こっても、いまだに支持率は不支持率を上回ったままです。
 その国民のいらだちがよく伝わってくるブログ記事がありました。きっと同感だと感じる人も多いと思います。

 いずれにしても、旧社会党から、市民派、またタカ派にまでウィングが伸びている党内をまとめ、国民の期待を引き出し、引き寄せる戦略を打ち出していくことが、信頼を取り戻すためには最低限必要ですが、そのためには強いリーダーシップが欠かせません。国民が求めているのはそつのない優等生ではないのです。それはアメリカの大統領選でも感じることです。

 問題は、政策の解説や批判ではなく、経済や社会がいい方向に動きそうだという希望を感じるビジョンを発信し、大胆な政策提言を行える人材が党内にいるのかです。どうでしょうか。アベノミクスが失敗し、再び経済が減速しはじめ、さらに党内の緩みからさまざまな問題が起こってもほとんど安倍内閣への支持率が落ちないのも、やはり安倍総理にかわるリーダーを国民が見いだせないからでしょう。

 国民に選択肢がない。これほど不幸はありません。民主党は、すくなくともリーダーを選択できる状況をつくりだす責任を背負っているはずです。でなければ国民からすれば、政党助成金も無駄な投資になってしまいます。

 維新の党と合併するよりは、民主党の代表を変えるほうが与党にとっては脅威でしょうし、実現するかどうかは別にして、いっそのこと、もう消滅に向かっている維新の党ではなく、おおさか維新と手を組み、大阪で実績を残した橋下前市長を代表に据えるぐらいの発想の変換をやってみれば、復活の道が見えてくるかもしれません。

(2016年02月23日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)