日本の少子化が止まらない。

 厚生労働省がこのほど発表した平成22年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に出産する子供数の推計値)は、2年ぶりに上昇に転じ1・39となった。

 これは、厚労省の国立社会保障・人口問題研究所が5年前にまとめた22年の予測値「1・22」よりも高く、一見、改善したかに思える。だが、人口維持に必要な「2・07」にほど遠い。相変わらずの低水準だ。この流れに歯止めをかけることはできるのだろうか。結論から言えば、極めて難しい。理由は簡単だ。出産期の女性数が減り続けるからだ。

 この世代の女性数は昭和45年から平成8年まで約3千万人で推移してきたが、9年以降は毎年約1%のペースで減少し続け、21年は約2650万人だ。

 22年の出生率が上昇したのは、団塊ジュニア世代の出産が増えたことが大きいが、団塊ジュニアも30代後半である。今後は母親となり得る女性数は急速に減る。少子化が少子化を呼ぶ悪循環である。

大都市でも深刻化


 もちろん、長期にわたるベビーブームが到来する可能性を否定はできないが、出生率減少はいまに始まったことではない。戦後おおむね下落しており、あまり期待できない。

 婚姻数の下落傾向も少子化に拍車をかけている。日本は結婚しないと子供が生まれにくい国とされるが、22年の婚姻数は前年より7521組少ない70万213組。結婚に対する価値観の多様化や、不安定な雇用に置かれた若者が増えたことなどが背景にあり、こちらも一朝一夕で改善するとは思えない。

 一方、高齢化はすでに生まれている人の予測である。人数もその年齢構成も分かっており、大きく外れることはないだろう。予期せぬ出来事で死亡率が急増することでもない限り、流れが変わることはない。つまり、少子高齢化は政府が小手先の対策を講じれば何とかなるレベルの話ではないのだ。

 では、われわれはどうすればよいのか。答えは、社会が激変するのを少しでも緩和することだ。そのためには、やはり少子化対策に全力を挙げることである。少子化対策を講じることで少しでも時間を稼ぐ。その間に「少子高齢化を前提とした社会」へと転換を急ぐべきだ。

 少子高齢化の影響はシャッター通り商店街や、小中学校の廃校、職場の後継者不足など、一部で顕在化している。しかし、これらは序章にすぎない。高齢化も人口減少もこれからが本番だ。大都市でもやがて深刻な問題となる。

 40年もすれば国民のほぼ半分が高齢者となる。若い消費者を中心として発展してきた大都市ほど変化の波は大きい。少しでも少子高齢化のスピードを遅らせなければ、国民生活は混乱する。

常識を白紙に戻せ


 少子高齢化を前提とした社会への移行には、人口増の時代の発想や常識を白紙に戻す必要がある。

 例えば、高齢化社会を生きていくための重要な生活基盤である年金制度だ。現役世代が高齢者に「仕送り」する仕組みである。高齢者が急増し、支え手が減るのだから、どう考えても維持できないであろう。

 政府は国費の投入によって破綻を防いできたが、こうした場当たり的な対応はいつまでも通用はしない。だが、年金制度を一から作り直すのは、移行に膨大な時間がかかり間に合わない。

 ならば、年金の位置づけを考え直してみることだ。年金は老後生活の主柱ではあるが、すべてを支える制度ではない。少子高齢化時代には年金に依存しすぎることはできないとの認識を持つことだ。

 例えば、定年を延長し、働きたい人は働ける環境を整える。公的住宅の整備などを進め、お金をあまり使わなくても暮らせる社会基盤をつくる。コンパクトな街づくりで移動のコストを減らす。政府は年金制度の中だけで問題を解決しようとせず、さまざまな政策を組み合わせる知恵と工夫が問われている。
(論説委員 河合雅司)
                     ◇
 3年後に団塊世代が65歳以上となり、少子高齢化時代はこれから本番を迎える。国家の在り方そのものが問われているこの問題に対し、われわれはどう対応すればよいのかを考えていく。