大下英治(作家)

 わたしは「週刊文春」の特派記者、いわゆるトップ屋を十三年間続けた。そのわたしから見て、最近の新谷学編集長率いる「週刊文春」のスクープの連発は、目を見張らされる。

 わたしが行きつけのクラブで飲んでいると、わたしがかつて「週刊文春」の記者であったことを知っていて、何人もがまるで探りを入れてくるかのように訊いてくる。

 「来週の『週刊文春』のスクープは、何なの?」
 それほど、毎週、世間をアッといわせる記事を連発している。

 わたしの「週刊文春」時代も、これほどスクープ記事を連発したことはない。

 現在「WiLL」の編集長をしている花田紀凱さんがデスク時代、土井たか子と北朝鮮問題などヒットすると、第二弾、第三弾…となんと十弾くらい続けることはあった。

 田中健五編集長時代のことで、今だから打ち明けるが、田中編集長の家に銃弾が打ち込まれたことがあった。それも、田中編集長の寝ている頭上三十センチをかすめたのである。実に、スクープ記事も命がけなのだ。
1978年12月29日付サンケイスポーツ1面
田宮二郎猟銃自殺 「白い巨塔」放送中の悲劇 
1978年12月29日付サンケイスポーツ1面
田宮二郎猟銃自殺 「白い巨塔」放送中の悲劇 

 わたしについていえば、昭和五十三年六月一日号『例のM資金にのせられた“クール・ガイ”田宮二郎の誤算』という記事も、話題をよんだ。田宮氏が、いわゆるM資金詐欺にひっかかっているというのだ。
 
 M資金詐欺にひっかかる者は、後を絶たない。ロッキード事件に関連した大庭哲夫全日空前社長の他、富士製鉄、東急、TBSなど一流企業のトップがこの正体不明のM資金に踊らされている。田宮氏は、二千億円を無利子で借りられるというので、すでに大手商社に勤めていた兄弟を辞めさせ、いっしょに事業をやるというのだ。

 わたしは田宮氏に会うと、五十億円かけて、世界の俳優の人形館をつくる、セメントの輸出など田宮コングロマリットをつくると声をはずませた。

 実は、このネタ元は、田宮家の関係者からのものであった。このまま放っておくと、膨大な借金を背負い、田宮家が破滅する、とおそれ、記事になることで田宮氏が目を覚まし、傷が浅くてすむだろうということであった。

 ところが、この記事が掲載された半年後の年の暮れ、田宮氏は猟銃自殺を遂げた。