リオデジャネイロ五輪のマラソン男女日本代表は、17日の日本陸連理事会で決まり、発表される。陸連は2年前に基準を設けて選考を進めてきたが、不振の男子では代表枠削減などが取り沙汰され、女子では設定記録を上回った福士加代子(33)=ワコール=が2度目の選考会出場を計画。いずれも物議を醸した。地元開催となる4年後の東京五輪代表選考はどうあるべきか。

 男子は3度の選考会で陸連の派遣設定記録2時間6分30秒に遠く及ばなかった。選考レースの途中では、代表枠3の削減まで陸連幹部が示唆する事態になった。箱根駅伝で青学大を2連覇に導いた原晋監督(49)はユニークな視点から提言を行った。

 「マラソンの五輪メダルは日本の悲願。注目されているのに、陸上界だけの論理(選考)は成り立たない」

 そんな持論を持つ原監督は選考基準(選考レースで日本勢上位3人以内が対象、タイムと内容を総合的に判断する。設定記録を上回った者を優先)を撤回して若手を登用するよう求めた。

 教え子の下田裕太(19)が2月の東京マラソンで、2時間11分34秒をマーク。選考対象となる日本勢2位に入ったことで、身びいきとの批判もあった。

 「次の五輪が東京でなければ言いません。でも東京である以上、今後のことを考えていかないと」
2月の東京マラソンでは青学大・原晋監督の指導する下田裕太が代表選考対象となる日本勢2位に入った
2月の東京マラソンでは青学大・原晋監督の指導する下田裕太が代表選考対象となる日本勢2位に入った
 さらに原監督は選考基準の根本的問題を指摘した。

 「五輪も世界選手権もペースメーカーはつかない。勝負が重要。だから選考レースではペースメーカーは外すべし」

 そして東京五輪へ向けた選考方法にポイント制導入を提案した。ハーフマラソンや1万メートルも含め、一定期間の記録をポイント化。そこに選考レースの結果も加味してランキングで決める制度だ。

 国民が納得できる選考基準を求めた原監督はジョークとも、本気ともつかない言葉で締めた。

 「国民あっての陸上界。一般の方々からは『もっといけ、もっといけ』と言われています。主に居酒屋で…」。

 マラソンと並び、五輪の注目競技である競泳も、かつては代表選考で物議を醸した。

 2000年4月、シドニー五輪代表選考会を兼ねた日本選手権。女子200メートル自由形を制しながら代表から漏れた千葉すずが、これを不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したことで、社会問題化した。

 この“事件”をきっかけに、競泳の五輪代表選考基準は明確化された。独自で「派遣標準記録」(世界ランキング16位、入賞圏内を想定)を設定。日本選手権でこの記録を突破した上、上位2位以内に入ることが代表選出の条件となった。

 以前も代表争いは日本選手権での一発勝負だったが、優勝イコール五輪切符ではなかった。「世界で戦えるか」という曖昧な指針があったからだ。それを派遣標準記録というタイムに変えたことで、騒動に発展するような選考はなくなった。

 当時を知る日本水連の上野広治常務理事強化本部長は「裁判があったからこそこうなった。(透明性があるのが)いいところ」と現行制度の利点を挙げる。その一方で、「競泳だからこそ(一発勝負が)できるのかもしれない」とも指摘した。

 競泳が派遣標準記録を設定した一発選考に踏み切れるようになった最大の要因は、日本選手のレベルが上がり、層が厚くなったから。世界と戦える選手がごく一部だった1980~90年代の低迷期に現行制度を当てはめると、有力選手でも日本選手権での調子次第で代表落ちとなる可能性があり、リスクは大きい。

13日の名古屋ウィメンズマラソン後、シドニー五輪金メダリストの高橋尚子さんは複数の選考レースがある利点を「私は3つ(当時)の選考レースで成長させてもらった」と表現した。2020年東京五輪の代表選考でもレースが4つある現行制度を日本陸連が維持するのであれば、透明性が高く明確な選考基準が求められる。