財政再建への早道とは


 では、財政再建をどうするのか?国の財政再建を考える上で、有害な議論は、財政を家計に例えることだ。あなたのお宅にはお札を刷ってくれる銀行はないだろう。しかし、国には発券銀行である中央銀行があり、金融政策が行える。これは本質的なちがいだ。

 クルーグマンも緊縮財政を批判するコラムでこう書いている。「(ギリシャ危機によって)本当にユーロがダメになったら、その墓碑にはこう記されるべきだ。『国の負債を個人の負債になぞらえるというひどいたとえによって死去』と。」家庭では節約が有効だが、国の経済全体としては、合成の誤謬という問題があり節約は解決策にならない。だからこそ財政・金融政策で介入するというマクロ経済のマネジメントが必要となっている。

 ではどうするのか。これは簡単なことで、難しい最新の経済理論は必要ない。「景気が十分立ち上がるまで、財政も金融も引き締めないこと」の一言につきる。1997年の橋本増税も、2000年の日銀によるゼロ金利解除も、2006年の量的緩和終了も、2014年の消費増税もすべてが早すぎる政策の引締めであり、防げたことだった。

金融政策決定会合を受けて、記者会見する日銀の黒田東彦総裁=3月15日、東京都中央区
金融政策決定会合を受けて、記者会見する日銀の黒田東彦総裁=3月15日、東京都中央区
 私も財務省の官僚に、『増税は絶対ダメだといってるんじゃない。景気がよくなってから、つまり豚は太らせてから喰えといっているんだ。』といつも言っている。それでもまったく反応はないのだが、彼らは経済成長しても税収は増えないと本気で考えているのだろうか。

 増税しても景気が悪くならないなどという夢物語に基づく財政再建計画ではなく、具体的にここまで述べた最近の世界の金融やわが国の経済情勢をふまえた戦略を作る必要がある。そしてそうした戦略はこれまでみてきたとおり霞が関からは出てくるはずがない。だからこそ、消費税再増税回避にあわせて、財政再建戦略を見直し、信頼するに足る戦略を策定することが必要だ。これまで1997年の橋本増税の時代から20年間繰り返されてきた増税のみによって財政再建を実現しようとする試みは失敗の連続であったことを認め、かつてわれわれ民主党デフレ脱却議連が行った提言にあるような経済成長を優先する財政再建戦略に切り替えることが必要だ。 

 増税しなくても大丈夫だと書いた。増税回避をしても国債の信認は損なわれないのか、金利は上昇しないのか、疑問に思う方も多いだろう。

 前回の2014年の例をみてみよう。増税の判断時期がせまるにつれて、霞が関の息がかかった人々が「消費増税は国際公約。延期なら国債の信認が失われ、長期金利が上昇し、さらなる円安も」などと発言しはじめた。ところがときに増税延期の観測が流れ、ときに予定通り実施の噂が出ても、国債や為替市場はまったく反応しなかった。本当に国債市場が増税延期をマイナス要因として受けとめていたならば、市場は報道に一喜一憂したはずであったにもかかわらずである。逆に、増税延期の立場にたつ内閣官房参与の本田悦朗静岡県立大学教授は、10月に入って欧米で接触した約70社の機関投資家の7割弱は、消費増税を延期しても国債の信認に問題はないとの見方だったと発言していた。本田氏によれば残りの2割程度について、増税を延期する場合の国債の信認に関し「自分は心配しないが、他の市場関係者の見方が心配」とのことだったという。もちろん増税延期が決定されても国債価格は暴落しなかった。消費増税は国際公約だと主張していた人々が、今に至ってもこういう現象に対してきちんとした説明責任を果たしたという話は聞かない。この件に関してはやはり増税に反対したわれわれの議論が正しかったということだろう。その後も順調に国債金利は低下(=国債価格が上昇)し、現在、長期国債の金利がマイナスになっている。今も、増税延期の噂が出ているが、金利は上昇などしていない。つまり杞憂に終わったわけである。

「国民のための金融緩和」を実現しよう!


 数々の世論調査の結果をみても、野党は「国民のための金融緩和」つまり「金融緩和プラス所得再分配」というスタンスをとらなければ与党には歯が立たないだろう。とはいっても一般の理解は、「金融緩和政策=金持ち優遇」というくらいのものでしかない。これは的外れの理解だ。なぜか。資産家でもなく不労所得がなく、働く以外に収入を得るすべのないわれわれにとっては、金利を引き下げることによって景気を刺激する金融緩和には大きなメリットがある。かりに金利が高くなったとしても、それはすでに銀行預金をもっている人にとっては受け取る利息が増えてメリットがあるだろうが、一文無しの人間にはメリットはない。むしろ景気が悪化することによって、働いている会社の売上げや収益が落ち、受け取る毎月の給料も下がるだけだろう。金融緩和政策が欧米では労働者陣営の政策であることもこうした性質が原因だ。

 今、民主党を中心とした野党再編の真っ最中だ。私も民主党神奈川県連の代表として少しでも有権者の皆さんに期待していただけるように力を入れている。そこで新党に対して提案だが、昨年、コービンという新たな党首が選ばれた英国労働党が、スティグリッツとピケティをブレーンにすると発表した。新党もこれにならって、御用学者などではなくクルーグマン、スティグリッツなど海外の経済学者を招いてアベノミクスなどものともしない経済財政戦略を作ってはどうだろうか?

 新しい野党第一党の党首は、自分自身のプリンシプル、思想を持っていなければならない。霞が関の言いたいことをオウム返しにするような人間では絶対ダメだ。そしてそうした人の考え方に国民の間に共鳴現象が起きてはじめて野党は再生できるのではないかと思う。その最初の一歩となる政策が、「消費税再増税はとめよう!『サラリーマンへの不公平税制』をなくそう!」ということだと私は信じてやまない。