河合雅司・産経新聞論説委員

 参院選で民主党が大敗して以降、消費税増税をめぐる菅直人首相の発言がトーンダウンしたままだ。1日に行われた臨時国会の所信表明演説でも「社会保障に必要な財源をどう確保するか一体的に議論する必要がある」との認識こそ示したが、引き上げに向けた具体的道筋については口をつぐんだ。

 菅政権が消費税問題に目を背けている間にも、少子高齢化はどんどん進む。9月に総務省が発表した推計によると、65歳以上の高齢者は23・1%と過去最高を更新した。団塊世代が75歳以上となる15年後の平成37年には、高齢者人口は約3500万人とピークを迎える。毎年1兆円以上膨らむ社会保障費を誰がどう負担するのか。難題は何ら解決したわけではない。

 そもそも参院選で消費税引き上げが全否定されたわけでもあるまい。税率10%を掲げた自民党が議席を伸ばした説明がつかなくなる。国民の多くは老後に不安を抱いている。「社会保障制度を維持するためには、消費税増税はやむを得ない」という世論は変わってはいない。

 社会保障費の財源は税金と保険料と本人負担で成り立っている。景気低迷で税収が伸び悩み増税もダメとなれば、借金による穴埋めか保険料の引き上げという選択になる。さもなければ、サービスをカットするか本人負担割合のアップということになるが簡単ではないだろう。本当に必要な人が十分なサービスを受けられなくなったり、利用をためらうようではなんのための制度か分からなくなる。

 しかし、借金は将来世代へのツケ回しである。借金を当て込んだ社会保障制度というのは長くは続くまい。保険料負担もそろそろ限界だ。厚生労働省によると介護保険料は24年度の次回改定で月額5千円を上回る見通しだという。健康保険や年金、雇用保険の保険料もかさむ。

 住宅ローンの返済や子供の教育費などを抱えている人も少なくない。ましてや賃金が下がる時代だ。労使折半を嫌う企業が社員の非正規化を進めるとの懸念もある。「税投入を増やせ」という声も強いが、これも実質的に若者の負担感が強い。若者世代の悲鳴がやがて世代間対立につながることが心配だ。

 一方で、消費税が魔法のつえかは分からない。年金、医療、介護、少子化対策とどの分野も財源不足だ。不足分を全部消費税で賄おうと思えば大幅な引き上げが必要となるが、これにも限度というものはある。

 現在の社会保障制度は世代間の「仕送り方式」をとっている。支え手である若者数によって、サービス提供がどこまで可能なのか決まる仕組みだ。少子化が進む以上、消費税と同時にこれを見直すしかあるまい。

 ところが、後期高齢者医療制度で保険料が上昇したときの反発で分かったように、負担が増えることへの高齢者のアレルギーは相当なものがある。

 若者世代と高齢世代のコスト分担をどう引き直すのか。少子高齢化時代にかなった社会保障制度を構築するには、すべての世代の覚悟と協力が必要となる。