筆坂秀世(政治評論家、元共産党政策委員長)


 いわゆる議員の「身体検査」というのは共産党には特にないと思う。プライバシーを調べて「おまえ、ああだろう、こうだろう」っていうのはたぶんない。たまたま耳に入ってくる話があれば別だろうけど、組織として「身体検査」をするというような習慣はまずない。共産党の場合、「私、立候補したいです」とか「選挙に出たいです」って、自分から言って立候補する制度というか習慣がそもそもないんです。あくまでもそれは全部、党が決定するんです。

 たとえば、新宿区の区議会議員の場合、地区委員会の委員長を筆頭に常任委員がいます。「今度Aさんっていう人が引退するので、後の候補者に誰を立てようか。教師にいいのがいるが、教師をやめさせて落ちたらどうしよう。これは家庭の問題もあるから教師をやめさせてまで立てるわけにいかない」となった場合、「地域で熱心に活動してて地域に人望のある人がいる。この人に立候補してもうらおう」となって、この人に立候補の話をすることになる。つまり、いろんな党員の日常的な活動を目にして立候補者を決めているというわけです。

 僕は最初、参議院の比例代表の候補者になったんですが、当時は党の国会議員の秘書をしていた。そのころ共産党は比例で当選するとしたらせいぜい5人ぐらいのもので、そこにたとえば25人立てるとすると、落ちても構わない人を指名するわけ。僕なんかもともと秘書だったわけだから落っこちたらまた秘書に戻して党本部の勤務にすればいいだけの話。立候補は、ある日選対局長に呼ばれて「今度選挙に出てくれ。心配しなくても絶対当選することないから」って具合だった(笑)。そのあと、「次は衆議院の東京1区から出てみてくれるか」ということになって、衆院選東京1区から3回出馬して3回とも落選。それで「10年ぐらいやったんで、もういいでしょう。もう充分御奉公したでしょう」と降りたんです。そしたら今度は「次の参院選でまた比例で出てくれ、今度は順位が上の方で、当選する可能性がある順位で」となって、ついに当選した(笑)。

参院決算委員会で質問に立つ共産党の吉良佳子氏=参院第1委員会室
参院決算委員会で質問に立つ共産党の吉良佳子氏
=参院第1委員会室
 東京で吉良佳子って子が参議院で当選しましたが、彼女もそれまで都議選に出て落っこちてるんですよ。たぶん当時の東京都委員会の選対局長や都委員長が「なかなかいいじゃないか。今度、東京選挙区から参議院選挙に出そう」となって、本人に立候補の話をしたんでしょう。そうやって共産党は上が候補者を決めてくんです。普段の活動を見ていて「これなら話も演説もうまいじゃないか」とかね。池内沙織って子も参院選に出たり総選挙に出たりして、4回目で当選しましたよね。いま議員をやっている人だって、結構、落選経験を持ってます。書記局長の山下(芳生)君だってそう。落選してないのは志位(和夫・党委員長)さんくらいじゃないかな。

 公募議員というのは共産党では考えられないよね。最近はどうか知らないけど、昔の共産党だったら公募なんてありえない(笑)。共産党に入党するのは、議員になる道として入る人はまず一人もいないんですよ。党員としての活動において、別に議員が偉いというわけではなくて、たとえば区議会議員より地区委員の方が偉い。昔だったら宮本顕治(元中央委員会議長)さんがバッジ着けてないときだって、宮本さんが一番偉かった。国会議員は宮本さんの指導下で動いていたし、そういう組織だからね。そもそも共産党というのは。