中田宏(日本の構造研究所代表、前衆議院議員、前横浜市長)

新幹線フィーバーで沸く日本列島


 3月26日に予定される北海道新幹線開通のニュースがたびたび各種のメディアで取り上げられている。飛行機の倍以上の時間をかけて東京から函館まで新幹線で行くかどうかは別として、東京を出発した新幹線が青函トンネルを越えて北海道に上陸するのだから、鉄道ファンならずともその話題性については認めるところだ。おそらくは、3月から4月にかけて、どのテレビ局でもニュースや旅番組などで、函館の観光名所やグルメなどが紹介されるのだろう。正直、私はいまから「またか」という嫌悪感を覚える。
北海道新幹線開業日の一番列車の切符を求め、みどりの窓口に並ぶ人たち=2月26日午前10時、JR函館駅
北海道新幹線開業日の一番列車の切符を求め、みどりの窓口に並ぶ人たち=2月26日午前10時、JR函館駅
 昨年もそうだった。3月14日、長野から富山、金沢に至る北陸新幹線が開業した。地元は「新幹線フィーバー」ともいえる千客万来の活況に大いに沸いた。石川県は、ゴールデンウィーク期間中に金沢城公園を訪れた観光客数が前年対比で倍増したと発表した。また、JR西日本も、延伸区間の上越妙高・糸魚川間の乗客数が開業後2カ月で累計約170万人となり、在来線特急だった前年対比で約3倍の水準となったと発表した。そして、テレビでは温泉で日本海の幸に舌鼓を打つなどの浮かれた光景ばかりが映し出されていた。平成23年に熊本や鹿児島に開通したときの盛り上がりも同様だった。

 だが、新幹線開業を祝うテープカットの華々しさの裏には、とんでもない赤字地獄があることをテレビはこれっぽっちも伝えていない。目先の地元利益を求める業界や国民から票を得んがために、政治家が「我田引鉄」をした国鉄の失敗とまるで同じだ。万年赤字の国鉄が巨額債務を抱え、当の国鉄は民営化されたものの、その債務返済に国民はいまもなお巨額の税金を納めている。

 国土交通省はその具体的な金額を公表していないが、同省の「平成25年度:日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律に定める施策の実施の状況に関する報告」(平成27年2月)によれば、平成25年度の1年間に債務残高が2970億円減少、同年度末段階で18兆1083億円にまで元本部分の償還がなされたことがわかる。したがって、旧国鉄債務の元本償還費および利払い費は、いまなお年間約5000億円前後に達しているものと推察される。そして、これらの支払い財源については、「郵便貯金特別会計からの特別繰入(平成14年度まで)、たばこ特別税収、一般会計国債費等により手当した」旨が記載されている。

 各種メディアもその現実を知らせないままに浮かれた話題だけを煽るのだから、新しいもん好きの国民はそんなことを露(つゆ)とも知らずブームに乗る。地域経済に恵みの特需がずっと続けばいいが、必ずブームは去っていく。メディアで北海道新幹線の話題を見聞きするたびに、私は「またか」と思いつつ、ますます疲弊していくわが国の将来に暗澹たる気持ちになる。