河合雅司・産経新聞論説委員

 少子化に歯止めがかからない。厚生労働省によると、平成21年の出生数は106万9千人となる見込みだ。これは人口減少時代に突入した平成17年の106万2530人以来の低水準である。人口の減少幅も年々拡大しており、21年は過去最大の7万5千人減と見込まれる。

 人口減少幅は今後、加速度的に拡大すると予測されている。毎年約100万人減る時代も遠くない。45年後の日本の総人口は現在の約7割となる予測だ。戦争でもこんな減り方はないだろう。社会の年齢構成も大きく変わり、「5人に2人が高齢者」という極めていびつな社会を迎える。

 政府はさまざまな少子化対策を講じてきたが、どんな政策も成果が出るには時間がかかる。そもそも結婚や出産は個人の選択の問題でもある。簡単には少子化の流れを変えられるものでない。だが、少子化に歯止めがかかるまで時間をいたずらに過ごすわけにもいかない。少子化対策に取り組む一方で、人口減少を前提とした社会づくりを急がなければならない。

 人口が減れば、消費が落ち込み、経済や産業に大きな影響が出ることが予想される。若い働き手も不足する。厚労省の推計では労働力人口(15歳以上の就業者と求職者)は今後20年で約1100万人減るという。社会の活力は削(そ)がれ、世代間で助け合う社会保障制度は根底から揺らぎかねない。

 山積する課題にどう対応するのか。まずは高齢者の活用から考えたい。定年年齢を見直し意欲のある人は働き続けられるようにする。生きがいを持って社会参加すれば気持ちも若くなる。高齢者の消費も進み、新たなビジネスチャンスも生まれる。年金支給開始年齢も引き上げれば、高齢者は若者に支えられる側から支える側に回り、若者世代の負担も軽減できる。

 働き手不足解消には、出産した女性の復職や、働く意思がありながら不安定な就労状況に置かれている若者の再チャレンジの道を広げることも大事だ。

 日本を牽引(けんいん)する新産業の育成も急務だ。日本は「ものづくり」で発展してきた。人口減少社会においても、日本ならではの技術力に期待したい。企業や大学では先端医療技術や介護ロボット、ITなどの分野で息吹が芽生えつつある。

 内需の掘り起こしにも力を入れる必要がある。これまでは若者をターゲットとした商品開発が中心だったが、今後は高齢者向けサービスの需要が高まる。医療や健康分野などは有望な産業になるとみられている。

 公共事業も大きく変わる。今後は住宅のバリアフリー化や都市のコンパクト化にニーズが出てくる。政府や自治体が税収不足による財政悪化で公共サービスを制限する事態も想定される。不足する公共サービスを誰が担うのか。地域住民同士の助け合いの仕組みを整える知恵も求められるだろう。

 日本は世界で最も少子高齢化が進んだ国だが、日本だけの課題ではない。一歩踏み込んでトップランナーである日本が独自の「少子高齢化ビジネスモデル」を作り上げ、これを少子高齢化の解決策として世界に発信していく。それぐらいの「逆転の発想」があってもいいのではないだろうか。