この問題の難しいところは、パチンコなどギャンブルが、受給者にとってはひょっとすると『最低限度の生活』、即ち『健康で文化的な生活水準を維持することができるもの』(生活保護法第3条)であるかもしれないという点。これは非常に曖昧な概念であり、人それぞれの価値観に関わること。全員一律に“ギャンブルは悪だ!”との線引きをすることは不可能だろう。

 今回、厚労省や県が“停止措置の停止”を求めたのは、現行の生活保護に係る運用ルールを今すぐ変更することは得策ではないと判断したからだと推察する。もしこの運用ルールを変更する場合、法律改正ではなく、運用ガイドラインを修正すれば足り、国会審議は要らない。しかし、対外的に説明するための説得材料に乏しければ、ルール変更は難しい。

 生活保護費の内訳は、直近の2013年では、割合が高い順に、医療扶助費1.7兆円(47%)、生活扶助費1.2兆円(34%)、住宅扶助費0.6兆円(16%)、その他0.1兆円(3%)。

 ギャンブルに使うのは、生活扶助費からであろうが、このうちのどれだけの額がギャンブルに使われているのか、データは見当たらない。単なるギャンブルけしからん!パチンコけしからん!という観念論だけでは、ルール変更の説得材料としては全く物足りない。

 もちろん、生活保護の運用面では、「不正受給」の範囲は決められている。直近のデータでは、2013年度の生活保護費(総額3.6兆円)について、不正受給は4万3230件で187億円。1件当たりの金額は43万2千円で、全体からすると、0.5%程度。

 一方、不正受給の場合には返還を求めることになるが、2013年度末時点で返還されていない債権は13万件で計490億円。このうち、自治体の督促や指導が不十分だったり、転居先を調べずに所在不明になったりして回収できていない債権は1万4千件、計112億円。

 実際の生活保護行政において優先されるべきは、こうした不正受給への対策であるはずだ。不正受給はわずか0.5%ではあるが、現に不正だと認定されているからだ。ところが、パチンコなどギャンブルへの生活保護費の使用は、不正なことと認定されているわけではない。となれば、厚労省としても、現行ルールで不正でないものよりも、現行ルールで不正であるものに注力するのは当然のことだ。更に言うと、ギャンブル使用の件よりも、不正受給費の回収に全力を挙げるべし、となる。

 それはさておき、生活保護受給者数の増減の理由は、政府の景気・経済対策とは結果的に関連性はない。それは、これまでの景気指標関連データと生活保護関連データを重ね合わせて見るとすぐわかる。

 アベノミクスも含め、過去の経済対策が生活保護分野の改善に効果も効能も及ぼしているとはとても言えない。そもそも、経済対策と生活保護には相関関係は見られてこなかった。

 生活保護には、生活扶助、医療扶助、住宅扶助、介護扶助などがある。いずれの扶助も抑制していくことを迫られているだろうが、個々の受給ごとに事情が異なるので、マクロ財政の視点から優先・劣後の順位付けをすることは難しい。

 生活保護は個人向け補助金であるが、財政事情を慮れば1人当たりの支給規模を今後増やす余地はないと思っておくべきだ。解決策の一つとして、現金給付から現物給付への移行を真剣に検討すべきである(実は、これによって、ギャンブルへの使用はほぼ完全に防ぐことができるはずだ…)。