木曽崇(国際カジノ研究所所長)

 パチンコや競輪での浪費を続けたことなどを理由に生活保護を停止・減額してきた措置について、大分県別府市および中津市が県の指摘を受けて今後は同様の措置を行わない考えを示しました。本問題は昨年12月の別府市議会の一般質疑で取り扱われた事から論議に火が付き、九州・沖縄の弁護士らで組織する「生活保護支援九州・沖縄ネットワーク」などからは「支給停止は違法」として処分の取り消しを求める意見書も提出され、全国的な論議を呼んでいたものです。今回の別府市・中津市による方針転換によって、論議としてはひと段落したとも言えますが、本稿では生活保護受給者のギャンブル浪費に関して別の角度から引き続き論考を行ってみたいと思います。
 実は生活保護受給者のギャンブル浪費が大きな論議を呼んだのは、今回の大分県の事例が初めてではなく、2013年3月に兵庫県小野市がいわゆる「生活保護受給者『見守り』条例」を成立させた時にも同様の論議が起きました。この小野市条例は、生活保護受給者等がパチンコや公営競技などを含む各種遊興行為で浪費を行わないよう、地域住民による「見守り」を促す条例であり、市はその為のホットラインを設け、通報があった場合には担当職員による調査の実施、および必要に応じて指導を行うとするものでした。

 この小野市条例の制定を巡っては国政の場にまでその是非が持ち込まれ、当時の衆院厚生労働委員会では高橋千鶴子議員(共産)と田村憲久厚労相(当時)によって以下のような舌戦が繰り広げられています。

○高橋(千)委員

 基本的には保護費を何に使うかというのは自由だということでよろしいですよね。やはりそれは、アルコール依存症ですとか、買い物依存症ですとか、病的に何か支援をやらなければならないということに対して支援をするというのはいろいろな仕組みをつくる必要があると思うんですけれども、何かそれが、本当にわずかな保護費の中でのささやかな楽しみまで全部管理をされるのかということがあってはならないわけです。

 しかし、現実にそれが条例になったのが、兵庫県の小野市の条例でありますけれども、ここは私は三つ問題があると思っています。それは、生活保護費だけではなくて、児童扶養手当とかその他福祉制度についての金銭給付についても対象になっている。もう一つは、パチンコ、競輪、競馬その他ということで、何か、範囲がどこまで広がるんだろうということ。そして三つ目が、市民に通報の責務を与えている。こうなるとさすがに、ささやかな楽しみどころか、パチンコをやる人は皆通報しなさいではないですけれども、そういう極端なことになってはならない。


 以上のように小野市の条例制定に対して、最も激しく抵抗を行ったのが日本共産党でありました。彼らの主張は一貫して「当該条例は受給者の『ささやかな楽しみ』を管理しようとするものである」というものであり、条例審議を行った当の小野市議会は勿論のこと、前述のように国会の中でも激しい反対論を展開しました。