石蔵文信(大阪樟蔭女子大学教授)

 政府は女性に活躍してもらって日本経済を立て直したい方針のようだが、女性にとっては負担ばかりを押し付ける男性に都合のよい話と受け止められているようだ。

 若い世代が子供を産んで活躍するには保育園などの充実が必須であるが、需要に供給が追い付いていないのが実情。最近では、出産3カ月目から子供を預けられずに、退職に追い込まれそうな人から『保育園落ちた日本死ね』という痛烈なメールが発信され、社会問題化している。

 実は保育園は確実に増えているが、入園を希望する人がそれ以上に増えて待機児童は増加する一方という実態がある。子供を預けることができれば働きたいという親は潜在的にかなりいる。

 一方、子供に対する虐待が増えているが、児童相談所だけでは早期発見は困難である。そのような点から、私は仕事をしている、いないにかかわらず保育園を義務教育化すれば待機児童と虐待の問題は解決するだろうと以前から主張してきた。

 問題は、保育士不足とその待遇だ。急に保育士を倍増するのも困難であるし、待遇が悪ければ、給料の良い一般企業に就職するだろう。さて、ここまでは高齢者の健康と何ら関係のない話のようだが、実は子育てと高齢者の健康は大いに関係がある。

 最近よく耳にするのが、保育園の建設に反対する高齢者の話題だ。子供の声がうるさいようで、騒音と同じレベルで論議されて、保育園が過剰に萎縮しているのは悲しい。

 仕事をしている人は家にいないので気にならないだろうが、家にじっとしている高齢者には子供の声ですらイラつきの原因になるようだ。自分の孫が遊びにきたときにはうるさいとはあまり感じないと思う。おそらく“他人の子”の声だからイラつくのだろう。

(記事とは関係ありません)
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 家に引きこもっている高齢者の共通の悩みは“不眠と食欲不振”である。私からすれば疲れないから寝にくい、ご飯がおいしくないのは当たり前の話である。

 早くから睡眠薬を飲んでも寝られず、夜中に追加するものだから、朝に作用が残って転倒して大腿骨骨折など引き起こして寝たきりになってしまう。食欲がないので、胃腸薬ばかり服用するから逆に体調を崩す。仕事がなければ無理に寝る必要もなく、食欲がなければ無理に三食する必要もない。薬を飲むよりも日常活動を増やして体を疲れさせれば、睡眠・食欲の問題は解決する。

 では、何をすればよいのだろうか? 私が推奨するのは“子育て(孫育て)”である。自分の孫が近所にいれば積極的に送り迎えをする。1~2時間でも一緒に遊ぶ。孫がいても遠い人や孫のいない人は近所の保育園などでボランティアをすればどうだろうか?

 まだボランティアを受け付けている施設は多くはないが、ある程度の講習を受けた人が保育園でボランティア、特に朝早くと夕方に参加できるようになれば、保育士の負担はずいぶんと減るだろうし、参加者も子供の声をうるさいと思わなくなるだろう。

 子供たちの世話は疲れる。ヘトヘトになれば食欲もわくし、よく寝られる。実際、私は二人の孫の世話をよくしているが、孫がいる日は、午後10時前には意識を失う。そのため、原稿も遅れがちになる。高齢者が健康になり医療費が削減できれば、保育園を増やし、待遇も改善できる。このように高齢者の子育て参加は多くの効果を期待できる。