熊野英生(第一生命経済研究所首席エコノミスト)



 2016年の経済政策はアベノミクス第2ステージとして名目GDP600兆円に向けた消費喚起が大きなテーマになっている。その前提として、14年の消費悪化をしっかりと振り返っておく必要がある。

 14年4月の消費税増税のせいで賃上げの効果が相殺されたというのが通説だが、これは正確ではない。詳しく分析すると、高齢者無職世帯の消費落ち込みが大きかったことが分かる。60歳以上の無職世帯の14年の消費支出は前年比1・5%減であった。勤労者世帯の消費支出が同0.1%増であったのとは対照的であり、高齢者無職世帯が消費低下を引っぱったといっても過言ではないだろう。

 国民に提供する福祉・介護などの高齢者サービスの負担をまかなうために、17年4月の消費税の再増税は回避できない側面がある。しかし、14年を教訓として高齢者の消費支出を減らさないようにしなければ、600兆円など夢のまた夢である。

 高齢者向けの直接給付を増やせばもちろん、消費は増えるだろう。しかし、それには限界がある。まず必要な政策対応は、高齢者の勤労収入を増やすための環境を整えることだ。これは消費税再増税のときに避けては通れない課題である。そのためにはまず、「年金制度の壁」を取り払うことが必要となる。
 総世帯数のうち、世帯主60歳以上の高齢世帯の割合は、すでに53・2%(15年7~9月)と過半数を占める。その7割は無職世帯であり、彼らの主な収入源は公的年金である。

 60歳以上の人口がどのように推移するのかを、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計に基づいて調べると、17~25年までの年平均の伸び率は0・4%とごく僅かな人口増加ペースになっていく。さらに、40年には減少に転じる見通しである。