島田裕巳(宗教学者)

 「みんれび」という葬儀会社がアマゾンを通してはじめた「お坊さん便」というものが注目を集め、また騒ぎを引き起こしている。

 お坊さん便は、法事・法要の際に僧侶を手配するというサービスである。何よりものウリは、費用というか、布施の額が決まっていることで、一律税込みで3万5000円である。

 みんれびのホームページを通して申し込むと、この3万5000円の「お布施」は直接僧侶に渡すことになるが、アマゾンを通すとチケットを買うようになっていて、依頼する側が紹介された僧侶と打ち合わせを行うことになる。

 これはあくまで初七日以降の法事・法要のための僧侶の手配であって、葬儀の際のものではない。ただ、みんれびのホームページでは、葬儀の際の僧侶については5万5000円以上で手配するとしている。ほかに、戒名については2万円でアマゾンからチケットが販売されている。
 注目しなければならないのは、その注意書きのなかにある「菩提寺とのお付き合いがある方はご利用になれませんので事前にご確認ください」の箇所である。

 ここにこのサービスが生まれた何よりもの理由があるわけで、お坊さん便は、特定の寺に墓がなく、壇家関係を結んでいない家をターゲットにしている。檀家になっていないので、法事・法要に呼ぶ僧侶がいないのだ。

 それも、現代の社会では、とくに都市部を中心にそうした家が増えているからである。新たに墓を設けるという場合、寺院墓地にそれを求め、檀家になるという家は少ない。なにしろ檀家になれば、寺のスポンサーになるわけで、建物を修理するなどという際には、かなりの額の布施を求められる。

 そこで多くの人たちは、いわゆる「民間霊園」に墓を求める。こうした民間霊園の母体はたいがい寺なのだが、石材業者やデベロッパーが管理運営しており、「宗教宗派を問わず」という形で募集され、檀家になることを求められない。寺が母体になるのは、宗教法人ではないと墓地の許可が下りないからだ。

 お坊さん便は、布施の額を一律にしたことで、布施の額をどうするかで悩む人たちの不安を解消している。布施は本来なら、出す側が、自分の信仰心や経済力を勘案して額を決めるものだが、一方で「相場」というものがある。相場よりも安い布施だと、坊さんから突っ返されるなどという話も聞く。

 しかも、3万5000円はそれほど高いわけではない。2万円の戒名なら安い。そういう受け取り方をされているはずだ。

 ところが、お坊さん便に対しては、仏教界がかみついた。各宗派の集まりである全日本仏教会は、「宗教行為を定額の商品として販売することに大いなる疑問を感じる。定額にすることによって『お布施』本来の宗教性を損なう」として、アマゾンにお坊さん便の中止を要請した。

 仏教界にとって一番困るのは、お坊さん便が定額であることで、それが信仰心を伴う布施ではなく、料金の支払いと見なされることである。そうなると、僧侶が法事・法要を営むことが、宗教行為ではなく、商売としてとらえられる恐れが出てくる。