河合雅司・産経新聞論説委員

 ついに、4人に1人が高齢者という社会が到来した。総務省が公表した4月1日現在の人口推計によれば、65歳以上が25・6%を占めた。

 高齢化は全国一律に進むわけではない。高齢者が増えるのは大都市部だ。すでに高齢化率が高い地方では人口減少に伴い、高齢者数も減ることになる。

 ビジネス優先の街づくりを進めてきた大都市部を高齢者向けに改造するのは大変だ。一方、人口が激減する地方は社会が成り立たなくなる。双方の悩みを一挙に解消するには、大都市部から地方に高齢者が移住することである。

 しかし、移住を個人のレベルで考えると簡単ではない。せっかく築いてきた地域のネットワークや友人関係が途切れるリスクを冒してまで、見知らぬ土地に移り住むことに抵抗感を持つ人は多いだろう。最初から人脈を作り直すのは面倒であるし、その土地に伝わる冠婚葬祭などの“しきたり”になじめるのか不安も残る。

 都会に住み続ければ、簡単に親類や友人と会える。コンサートやスポーツ観戦もしやすい。地方暮らしを夢見ながら、いざとなると尻込みする人は数え切れない。

 こうした懸念を払拭する方策として話題を呼び始めているのが、「ワープステイ」と呼ばれる“お試し移住構想”だ。定期借家権を使って5年契約で都会の自宅を貸し、移住先の家を借りる仕組みだという。契約期間が終了すれば、都会の自宅に戻るか住み続けるかを選ぶ。「永住ありき」でなく、“お客さん”としてリゾート地に長期滞在するイメージである。

 地元の人々への顔つなぎをはじめ、スムーズに暮らしに溶け込めるようガイド役を置く。滞在中は農漁業の手伝いや、アウトドアの趣味、スポーツを楽しむ。人口減少に悩む地方にとっても、元気な高齢者が5年サイクルで移り住むのは魅惑的だ。地方で増える空き家をリフォームしてコストを抑える。都会の自宅の賃料と移住先の家賃の差額が年金収入の足しになるという構想だ。

 この構想をよりよいものにするため、いくつか提言をしたい。まずは、移住先を大都市部から特急電車で1時間半か2時間程度のところとすることだ。たびたび大都市部に日帰りできれば、親類や旧友たちと疎遠にならずに済む。

 2つ目は地方大学やスポーツクラブを巻き込んで、学び直しや、サークルを結成して本格的に趣味を満喫できるようにすることだ。

 団塊世代が高齢者の仲間入りをし、シルバー像は大きく変わった。かつての「老人ホーム」のイメージとは決別し、街を大学キャンパスに見立てる。学生時代に戻ったかのように誰もが若々しく、生きがいを持って暮らす「シルバータウン」の創設である。

 3つ目は医療機関や介護事業者との連携である。最期まで安心して過ごせるサポート態勢も整えておく。成功の秘訣(ひけつ)は、「新たなシルバー像」が住みたくなる魅力的な町並みを整えることにもある。

 とかく暗いイメージを持たれがちな高齢社会をいかに楽しむのか。つまらぬ公共事業をやめて、まず国のモデル事業として始めたらどうか。