コンピューターの弱点を探る戦い


 コンピューター将棋に詳しい大阪商業大学・アミューズメント産業研究所主任研究員の古作登氏(元週刊将棋編集長)は勝敗について、PONANZAの強さを認めた上でも「一勝一敗と見たい」と予想。

「山崎さんは定跡にとらわれない棋風で破天荒な面もあり、ソフトと対照的とも言え、面白い対決になった。持ち時間も長くてじっくり考えられるのも大きい。山崎さん側からすると、局面をリードし、作戦局面に誘導しやすい先手番を第2局に残しているので、初戦も思い切って戦えるのではないか」とみています。

 昨年の団体戦の電王戦では2勝2敗で迎えた第5局、「阿久津主税 八段 vs ソフト・AWAKE」で、阿久津八段が、同ソフトにアマ棋士が以前勝利した局面を目指し、開発者が短手数で投了を選択したことが賛否を呼びました。また第2局でもプロ側があえて「角行」を不成(ならず)と指した手に対し、ソフトが認識できず反則負けの形になる場面もありました。

 古作氏は「人間同士の対戦でも相手の得意戦法を調べて対策を練るように、対コンピューターでもそれ用の対策を検討するのは当然。ソフトは現局面から数手先まで読むのは完璧になりつつあるが、数10手先に落とし穴があるが、その局面を探索、評価するのは完全とは言えない状況だろう。阿久津さんの選択は悪くない」とし、コンピューターの弱点を探るのは人間対コンピューターならではの戦いとみています。


囲碁でもAIがトップ棋士を破る


 米グーグル社の研究部門が開発した囲碁AI「アルファ碁」はAIが自ら学習を繰り返す技術を採用し、一気に進化しました。古作氏は「昨年10月、別のプロ棋士に勝利した時点と比べ、雲泥の差があるほど進化していてイ・セドルさんも困惑したのではないか。その中で第4局はイさんの常識外の妙着がアルファ碁をおかしくさせ勝利を奪ったのは注目される」と分析。「若手将棋棋士の中にはコンピューターが示した手に影響を受け、学んでいる人が増えている。ソフトやAIのよいところを取り入れ、自分の成長のためのツールとして使うのは有用ではないか」と話しています。

 囲碁AIの分野ではグーグル社だけでなく、フェイスブック社も参入するなどAI開発競争は世界的関心になりつつあります。AIは自動運転車だけでなく、さまざまな分野の仕事で人間にとって代わるという予測もあり、将棋ソフトの開発者が突然世界的企業に引き抜かれるといったニュースもいずれ聞かれるかもしれません。