有田芳生(参議院議員)

 熊本で起きた大地震の発生は夜の9時26分ごろだった。現地で被災され、余震で不安を抱える人たち、あるいは倒壊家屋のなかで生命の危機を最大限に感じながら救出を待っている人たちがいるなかで、この日本のネット上では悪質なデマと差別の煽動が流されていた。

 いわく「動物園のライオンが脱走した」「朝鮮人が井戸に毒をまいた」など。ツイッターでは「熊本県災害対策本部」といった、あたかも公共団体であるかのようなアカウントでふざけた投稿を続ける者もいた。ネットをみずからの表現世界にして、匿名をいいことに全能感に酔いしれているのだろうか。深夜から早朝を問わず、愉快犯的な書き込みがいまなお続いている。

町役場前に避難し、毛布にくるまって夜を明かす住民ら
=4月15日、熊本県益城町(中島信生撮影)
町役場前に避難し、毛布にくるまって夜を明かす住民ら =4月15日、熊本県益城町(中島信生撮影)
 5年前の東日本大震災のときもそうだった。「助けてくれ」と被災者を装ったリアルな描写のツイートもあれば、所有する金庫をこじ開けようとしている写真に外国人犯罪が行われているとの説明をつけたものもあった。

 ネット世界は悪意あふれるパンドラの箱を開けてしまった。東日本大震災当時より、ヘイトスピーチの書き込みは増えている。しかし、この5年間で大きな違いがある。悪質な書き込みのアカウントを記録し、ツイッター社に削除を求める書き込みが増え続けているのだ。問題を厳しく指摘されたため、慌ててアカウントを削除する者も多かった。イタチごっこのようではあっても、デマや暴言を許さないという動きは、確実に広がりつつある。

 その起動力はここ数年にわたって路上で、そしてネットでまき散らされているヘイトスピーチ(差別煽動表現)に真正面から対峙してきた人たちの蓄積された効果的な行動にある。陰湿に続けられるヘイトスピーチや特定個人への誹謗や中傷は、いまだやむことはない。それに対する批判はもちろん、ツイッター社、Google、YouTubeなどへの削除要請も行われてきた。なかには法務局に対して人権救済の申し立てを行うことで、行政当局が動き、ネットからの削除を実現したケースもある。

 わたしも参議院法務委員会などで差別などネット上の問題発言を法務省が積極的に取り上げ、是正すべきだとなんども追及してきたが、いまだプロバイダーの消極姿勢などで、事態の改善が図られない残念な現状がある。