田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)

 先日、経済評論家の上念司氏、エコノミストの片岡剛士氏と私の三人で、近時の経済問題について公開討論の機会を得た。我々三人は世の中でいうところの“リフレ派”である。“リフレ”は、リフレーションの略語であり、日本の長期停滞がデフレ(物価下落)とデフレ予想によってもたらされ、その解消には金融政策の転換を必要条件にした低インフレ(とその予想)が必要だと考える人たちである。

 その討論の場では、現在の日本経済の状況を打開するための政策手段が話題になった。特に上念氏から日本の外貨準備高を財政政策の財源として活用する案への同意を求められた。私も執筆者のひとりである『日本建替論』(麻木久仁子・田村秀男・田中秀臣、藤原書店2012年)で、かってこの外国為替特別会計(外為特会)の積極的活用を、共著者の田村秀男氏が主張したからである。本の宣伝文句が、「100兆円の余剰資金を動員せよ!」とあるのは、この外為特会の活用に基づく。
 そもそもいまの日本経済の状況を「GDPギャップ」の観点からみてみよう。GDPギャップとは、日本経済全体の購買力(=総需要)がどれだけ財やサービスなどの総供給量に上回るか、あるいは不足するかを示す指標である。最近の日本経済の低迷をうけて、GDPギャップはマイナス幅を拡大していて、内閣府の試算では約8兆円程度である。このGDPギャップのマイナス幅の拡大(デフレ・ギャップともいう)は、主に消費増税の影響でもたらされた。片岡氏は独自の試算で、デフレ・ギャップを埋め、さらに2014年から続く消費増税のマイナスの影響を払拭するためには、約8兆円規模の消費減税が必要であると主張している。私も本連載で強調してきたように、消費減税に賛成するものである。

 他方で、このような「減税」議論をすると必ずでてくるのが、“財源論”という奇怪な考えである。そもそも増税によって経済が停滞してしまい、それが将来的な財源を失ってしまうので、それを回避するために減税を行うというのが趣旨だ、それなのに、なんで今現在の減税に財源を要求されるのかまったく理解しがたい。減税する一方で、それと同額の財源(増税など)を課せば、プラスマイナスゼロでまったく意味のない政策になってしまう。しかしそれがいまの日本の財務官僚とその支持者たちの発想なのである。

 先の三人の公開討論でも話題になったのだが、現在の政治状況と世論の動向を踏まえると、すでに消費増税の凍結は自明のことのように思われる(むしろ実施すれば安倍政権とその経済政策の終焉を意味するだろう)。

 問題はいつそれを公表するかだ。5月26,27日に開催される伊勢・志摩G7サミットの会期中もしくはその前後が有力視されている。と同時に、(ドイツを除く)多くの先進国が共通して志向している世界同時リフレとでもいうべき事態に対応すべく、日本政府と日本銀行はより積極的な財政政策と金融政策の採用が求められている。