高橋 学(立命館大学・歴史都市防災研究所教授)


 4月14日21時26分に北緯32.7度、東経130.8度、深さ11kmを震源とした、M6.5の地震が熊本県で発生した。震源は内陸で深さも浅かったことから益城町付近で震度7の揺れを記録した。内陸直下型地震であり震源が浅いため揺れが大きく被害が大きくなった。この地震で不思議だったのは、これくらいの規模の地震が起きる前には、半日から3日ほど前に同じ場所で規模の小さな地震が前震として起きることが多いのに、それがなかったことである。

 そうしたところ、16日午前1時25分頃になって、北緯32.8度、東経130.8度、深さ12kmを震源とした規模のより大きなM7.3、震度7の地震が発生した。2004年10月24日の中越地震に似て本震にあたるようなものが複数回あり、余震の数も多い。2011年3月11日の東北地方・太平洋沖地震の場合にも、3月9日にM7.3の地震があり、これを本震としていたところ、11日により大きな地震が発生したのである。津波の場合も同じであるが、最初に起きた相対的に大きな地震が起きるとは限らず、本震、余震というような言い方は人間の勝手な都合に過ぎない。

熊本地震 益城町役場近くを歩く男性。奥の民家は16日の地震で完全に崩れたという=4月16日午前7時13分、熊本県益城町.jpg
熊本地震 益城町役場近くを歩く男性。奥の民家は
16日の地震で完全に崩れたという
=4月16日午前7時13分、熊本県益城町
 現在、熊本では27人の死亡者が確認され、住宅倒壊などの被害の細かな分析が始まっている。ここでは、あえてその前に別の指摘をしておきたい。

 すなわち、今回の熊本地震は、2011年3月11日発生したプレート型の東北地方・太平洋沖地震(東日本大震災)に先立って発生した2008年6月14日の岩手・宮城内陸地震(M7.2)死者・行方不明者合計23人と類似しているということである。

 熊本地震が発生する以前、福岡の警固断層や兵庫県の山崎断層で微細な震度1にならないような地震が頻発していた。また、熊本では2月12日以降、深さ10kmでM1.7~M2.7の地震が発生していた。これらの地震のそれぞれは規模が小さくとるに足りないようにみえた。この段階で、これらの地震を発生させているエネルギーとして、台湾-琉球諸島-西日本-中部日本-東日本の一部の位置するユーラシアプレートに注目し、それの下にもぐり込んで圧縮しているフィリピン海プレートの動き全体をみる必要性に気づいた。

 警固(けご)断層は玄界灘から博多湾、博多を北西-南東方向に横切る活断層であり、2005年に北半分が活動した。また、兵庫県の山崎断層も岡山県から兵庫県姫路市を北西-南東方向に横切る活断層である。これらは1995年に活動した兵庫県淡路島の野島断層・六甲断層系と「X」字状に交わる。このような関係の断層を共役(きょうやく)関係にあると言い、岩盤圧力で割れる時に形成される。そして、フィリピン海プレートがユーラシアプレートを南から北に圧縮していると考えた時、この共役関係を念頭に置くと台湾から東日本の一部までの断層の動きが理解しやすくなる。

 台湾では2016年2月6日にM6.6の地震が陸上のプレート境界で生じていた。さらに4月1日には、東南海地震を彷彿されるM6.1の地震が紀伊半島沖で発生した。また、4月10日には兵庫県神戸市南東部の六甲断層系でM4.3とM3.5の地震が続いた。ここに至り、台湾から東日本の一部までを全体として把握するのは間違いでないと確信するようになった。