「地震報道」の正しい読み方(1)


鎌田浩毅(京都大学教授)

東日本大震災以後、さまざまな地震予測情報がマスコミを通じて流れているが、過剰な危機感をもつのも、慣れてしまって油断するのも問題だ。地震予測情報とは、いかにつき合えばいいのだろうか。

「M8クラスが30年以内に87%」ってどういうこと?


 東日本大震災以降、さまざまな地震発生の予測に関する情報が発信され、マスコミで大々的に報道されています。これによって一般の国民は過剰な心配をしたり、逆に予測情報を軽視したりという正反対の現象が起きています。
 私は地球科学を専門にしており、地震・津波・噴火のアウトリーチ(啓発・教育活動)を行なってきましたが、現在、皆さんからたくさんの質問をいただいています。疑心暗鬼になっている方々も少なからずいるため、ここではマスコミに飛び交っている情報を理解する際に必要な内容を厳選し、わかりやすく解説します。正しい理解をすることで、日本列島で3・11から始まった「大地動乱の時代」を乗りきっていただきたいと思います。

マグニチュードと震度の関係とは?


 地震が発生すると直ちに「震度5弱の地域は○○」と発表されます。その後しばらくして、「マグニチュード7.2、震源の深さは30km」などという情報がテレビやインターネットで流れてきます。最初にこの説明をしておきましょう。

 1つの地震に対して「マグニチュード」は1つしか発表されません。一方、「震度」は地域ごとに数多く発表されます。マグニチュードは地下で起きた地震のエネルギーの大きさ、震度はそれぞれの場所で地面が揺れる大きさを示します。したがって、マグニチュードと震度は、似たような数字でも、まったく異なる意味をもつのです。

 いま大きな太鼓が1回鳴ったとイメージしてください。マグニチュードは、この太鼓がどんな強さで叩かれたのかを表わします。震度は、音を聞いている人にどんなふうに聞こえたか、ということです。

 太鼓の音は、すぐそばで聞くと大きな音ですが、遠くで聞くと大した音ではありません。このように震度は、太鼓の音を聞く場所、つまり震源からの距離で変わってきます。1つのマグニチュードからさまざまな震度が生まれるのは、このためです。

 東日本大震災はマグニチュード9の巨大地震でしたが、震源から遠ければ震度は小さくなりました。一方、マグニチュード6でも、自分がいる真下で起きれば非常に激しい揺れを感じます。「直下型地震」と呼ばれる危険な現象です。

 地震の規模を示すマグニチュードとエネルギーの関係をみておきましょう。マグニチュードは、数字が1大きくなると、地下から放出されるエネルギーは32倍ほど増加します(図1)。マグニチュード7とマグニチュード8は、数字としてはたった1の違いですが、非常に大きなエネルギーの差となるのです。
 東日本大震災以後、マグニチュード7や6の地震が頻発したため、私たちは地震の巨大なエネルギーに鈍感になっていますが、東日本大震災のときに放出されたエネルギーは、1923年の関東大震災の約50倍、また1995年の阪神・淡路大震災の約1400倍だったのです。図1から、マグニチュードの数値が示すエネルギー量の違いを、直感的につかんでいただきたいと思います。