「地震報道」の正しい読み方(2)


鎌田浩毅(京都大学教授)

地震発生確率はなぜ上昇するのか?


 地震調査委員会が発表する大地震が起きる確率の値は毎年更新され、しかも少しずつ上昇しています。地震発生確率はなぜ上昇するのかについて説明しましょう。

 いま、過去に起こった地震のデータをみると、おおよそ100年くらいの間隔で地震の被害を被ってきた場所を考えてみます。平均間隔が100年で起きるなかに、基準日となる現在が入っているケースです(下図 ア)。
 まず、現在を基準日として、この基準日から30年以内に地震が発生する確率を求めてみます。

 図のアのBの部分の面積は、いまから30年後までに地震が発生する確率です。また、Cの面積は、30年後のあと、ずっと先までに発生する確率です。すると、これから30年以内に地震が発生する確率は、Bの面積を、BとCを足し合わせた面積で割ることで算出されます。

 さて、図のアは、地震の起きる平均間隔である100年がまだ経っていない時点での発生確率を求める図です。一方、平均間隔が100年とされているにもかかわらず、前回の地震からすでに100年以上の時間が経ってしまったケースを考えると、図のイのようになります。すなわち、基準日がすでに平均間隔100年を過ぎたのに、一向に地震が起きないという場合です。
 ここでも発生確率は、Bの面積を、BとCを足し合わせた面積で割ることで算出されます。

 ここで、アとイの結果を比べてみると、イのほうがアよりも高い発生確率になるのです。

 たとえば、南海地震は前回の1946年の活動から66年が経過しているので、確率は60%となりました。一方、東海地震は1854年に起きた前回の地震から158年も過ぎているので、87%という高い値になったのです。

 さて次は、活断層のように、発生の平均間隔が1000年と非常に長い場合を考えてみましょう。この場合には、図のウのようにBの面積が相対的に小さくなるので、30年以内の発生確率は非常に小さな値となります。先ほど例に出した神縄-国府津-松田断層の発生確率(最大16%)が東海地震などと比べると小さいのは、そのせいです。
 ところで、東日本大震災の発生前に、宮城県沖では30年以内にM 7.5の地震が99%の確率で起きると予想されていました。また、想定死者はわずか300人というものでした。

 これらの予測は、1978年に死者28人を出したM 7.4の宮城県沖地震を基準の1つとしていたものです。ところが、東日本大震災の現実は、こうした予測をはるかに上回り、1500倍も規模の大きな巨大地震が発生してしまったのです。

 また、地震の再来周期からみても、宮城県沖では約40年ごとに繰り返して起きることを想定していたのですが、実際には1000年に1度の非常にまれな巨大地震が起きてしまいました。

 このように、地震発生予測はすべてを予見できるものではなく、東日本大震災のように予測をはるかに上回る巨大地震が起きることも、日本列島では決して珍しいことではないのです。地震調査委員会が発表する確率は、きちんとした事実に基づいて正確に計算されたものですが、それでも科学的な予測には「限界」があることは知っておいていただきたいと思います。