その後の地震発生を見ると、841年に信濃国地震と北伊豆地震が相次ぎ、850年には出羽庄内地震、863年には越中・越後地震が起きた。その直後の864年には富士山と阿蘇山が噴火するという事件が起きた。

 さらに、868年に播磨地震と京都群発地震が発生し、871年に出羽国の鳥海山、また874年に薩摩国の開聞岳が噴火した。

 そして東日本大震災に対応される869年の貞観地震の発生である。これが起きた9年後の878年には、相模・武蔵地震と呼ばれる直下型地震(M7.4)が関東南部で起きた。

 さらに、その9年後の887年には、仁和地震と呼ばれる南海トラフ巨大地震が起きた。

 これはM9クラスの地震で、大津波も発生した。そして最後の2つの地震が今後の予測に関してきわめて重要なのである。

2020年と2029年という計算


 たとえば、こうした「9年後」と、「さらに9年後」に起きた地震の事例を、21世紀に当てはめてみよう。東日本大震災が起きた2011年の9年後に当たる2020年は、東京オリンピックの年である。

 単純に計算すると、その頃に首都圏に近い関東で直下型地震が起き、さらに9年後の2029年過ぎに南海トラフ巨大地震が起こることになる。もちろん、この年号の通りに地震が起きるわけでは決してないのだが、もしこの周期が合ってしまうととんでもないことになる。

地震で倒壊した皇嘉門大路の築地塀跡。大量の瓦の破片が地震のすさまじさを物語る=京都市下京区
地震で倒壊した皇嘉門大路の築地塀跡。大量の瓦の破片が地震のすさまじさを物語る=京都市下京区
 9世紀に起きた大地震のうちで近年まで起きていないものが、首都直下地震と南海トラフ巨大地震の2つなのだ。しかも、後者の南海トラフ巨大地震は、発生の時期が科学的に予想できるほとんど唯一の地震である。

 我々専門家ができることは、過去のデータから判断して、確実にそれが起きると見做すことと、10年ほどの幅を持たせて時期を予測すること、だけである。しかし、これでも人生や仕事の将来を決める上では、非常に貴重な情報となるのではないか。

「知識は力なり」。知識があるかないかで、将来に対する意識が全く違ってくる。「3.11」以降の日本列島は千年ぶりの大変動期に突入した、といっても過言ではないことを、しっかりと認識すべきなのである。

 我々は東日本大震災の教訓として、「想定外をできるだけなくす」ことを学んだはずである。様々なタイプの地震が起きることを「想定内」とし、必ずやって来る巨大災害に向けて今から準備していただきたい。

かまた・ひろき 京都大学教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。通産省を経て97年より京都大学教授。専門は地球科学。テレビや講演会で科学を解説する「科学の伝道師」。京大の講義は毎年数百人を集める人気。著書に『地震と火山の日本を生きのびる和恵』(メディアファクトリー)、『火山と地震の国に暮らす』(岩波書店)、『火山噴火』(岩波新書)『もし富士山が噴火したら』『座右の古典』『一生モノの勉強法』(以上、東洋経済新報社)など。