河合雅司・産経新聞論説委員

 香港の活動家が不法上陸するなど、尖閣諸島をめぐる緊張が高まっている。だが、危機が迫るのは尖閣だけではない。多くの離島を襲う過疎化だ。

 2050(平成62)年の日本の姿を描く国土交通省の「国土の長期展望」の中間まとめは悲観的でさえある。離島振興法で定めた有人離島258のうち約1割が無人島になる可能性があるという。

 もちろん、無人化する島のすべてが国境離島や外洋離島というわけではない。しかし、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の総人口は今後50年で現在の7割弱にまで落ち込む。ここまで減っては影響は避けられないだろう。

 言うまでもなく、国境離島や外洋離島は排他的経済水域の重要な根拠だ。漁業や船舶の安全航行をはじめ、エネルギー資源などの確保といった国家の大きな役割を担っている。

 そうした役割を担い続けるためにも、多くの人が住んで、日本の主権が及んでいることが明確になっていたほうがよい。領土的野心を持つ国が押し寄せても簡単には手が出せない。離島の人口が減ることは、防衛力が弱まることにつながる。

 無人にならなくとも過疎化が進めば同じだ。例えば、日本人が減った島に、特定の国の人が大勢住み着いたら、どこの国だか分からなくなる。韓国資本が入り込んだ長崎県・対馬などでは懸念が広がっている。

 これは離島特有の問題でない。「国土の長期展望」は、現在の居住地域の約2割が「誰も住まない土地」に転じるという。さらに時代が進み日本人が本格的に激減すれば、日本列島の多くで人がまばらに住んでいる状況となるかもしれない。

 いま、外国資本による水源地の森林買収が問題となっているが、誰も住まない地域が拡大すれば、水源地にとどまるとはかぎらない。特定の自治体や地区の土地を集中的に買い占めることも考えておかなければならない。日本人の目の届きにくい土地が広がることになれば、合法的に日本国内に「外国の領土」を許すようなものだ。

 国会には外国人地方参政権の付与を模索する動きがあるが、領土を奪うつもりで外国人が大量移住してきたら、いずれ議会や行政を牛耳られかねない。人口減少社会において、外国人に参政権を認めることは国防上の“致命傷”になると認識することが必要だ。

 危機が迫るのは土地問題だけでない。さらに憂慮すべきは、急速な少子化である。自衛隊や海上保安庁、警察、消防といった“若い力”が求められる職種でも人手が不足する。

 尖閣問題をきっかけに、「国境の警備態勢を強化すべきだ」との主張も聞かれるが、現行態勢を維持することすらままならなくなるかもしれない。防衛白書は「少子化などにより、募集環境はますます厳しくなる」としている。

 少子高齢化は安全保障に直結するのだ。少子高齢化や人口減少を前提に、日本の「安全・安心」をどう確保するか考えなくてはならない。