山田順(ジャーナリスト)

 4月14日に発生した熊本大地震の報道を巡って、主にネット住民による「メディア批判」が繰り返されている。その背景には、現場に殺到したメディアの“過熱報道”があるが、これまで巻き起こったメディア批判には、納得できるものもあれば、「それは違うだろう」と納得できないものもある。

 そこで、「iRONNA編集部」の要請に応じて、これらの批判をチェックし、改めてメディアの役割、使命を考えてみたい。

活かされなかった「阪神・淡路」の教訓


 まず、メディア批判のなかで、これはどうしようもないと思えたのが、「関西テレビの中継車によるガソリンスタンド割り込み」事件だ。これは、4月18日、熊本県内のガソリンスタンドで、給油待ちをしていた車の列に同社の中継車が割り込んで給油していたという、信じがたい事件だ。

 地元のツイッターユーザーが、「ガソリン入れるために朝早くからたくさんの人が並んでたのに横入りされた」と、中継車の写真付きでツイートしたため、大拡散した。
 このツイートは、このように訴えていた。

“母が「後ろに他の人もいるので並んで下さい」て言ったのにも関わらず無視して我先にとガソリン入れてました。 テレビ局だからいいんですか?? もう少し考えて欲しい”

 たしかにその通りである。これは災害現場という状況とは関係なく、どこであろうと許されない行為だ。慌てた関西テレビは、すぐに「あってはならない行為」として、公式に謝罪したのは言うまでもない。

 それにしても、不思議なのは、なぜこんな割り込みができたのか?ということだ。
給油のためガソリンスタンドに並ぶ車=4月16日午前、熊本市東区
給油のためガソリンスタンドに並ぶ車=4月16日午前、熊本市東区
 関西テレビと聞いて私が思い出すのは、1995年の阪神・淡路大震災のとき、関西テレビの取材クルーが大活躍したことだ。当時、関西テレビでは全社員の約3分の1にあたる200人が地震による家屋倒壊などの被害を受け、報道局員の約4分の1は被災者だった。にもかかわらず、彼らは混乱のなか、視聴者、被災者のための現場報道を続けた。このときの教訓がなぜ活かされなかったのだろうか?

ヘリ騒音、過剰取材…次々批判の的に


 ガソリンスタンド事件に続いて批判されたのが、「報道ヘリの騒音」「現場クルーの過剰取材」への批判である。日本テレビは4月18日の午後17時半ごろから、倒壊した家屋内に閉じ込められた被災者を救済する模様を実況中継した。緊迫した現場の模様がお茶の間に流れた。

 しかし、ツイッターでは、「報道ヘリの音で、助けを求める声がかき消されたらどうするんだ」という声が拡散した。さらに、「救助した人をブルーシートで覆いながら歩かざるをえないのは、報道ヘリが空から撮影してるからでしょ。 助けを求める声を掻き消すし、救助作業の能率だって下げてる」「報道ヘリのせいでブルーシートたくさん使わなきゃいけないし、そうなると人手がたくさんいるし、迷惑だってわからないの?」などいうツイートもあり、ここでは「報道ヘリ」と現場の「撮影クルー」が、完全な悪者、邪魔者にされてしまった。

 さらに、4月18日のNHK「あさイチ」では、有働由美子アナが、ある視聴者からのFAXを読み上げた。このFAXの主は熊本に住んでいる友人から聞いたと言って、次のようにメディアを批判していた。

「余震で崩れそうなお宅の前でテレビ局がずっと待機しているのだそうです。どこの局かはわかりませんが、ご当人にとってはすごく失礼なことではないでしょうか?」