上念司(経済評論家)



党勢拡大しか考えない人々


 熊本地震で被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 東日本大震災が発生した翌日に、当時首相であった菅直人が福島第一原発に乗り込んだことは記憶に新しい。それによって現場を大混乱し、被害を拡大させたが、本人には未だにその自覚がないようだ。誰がどう見てもあれは政治パフォーマンスであり、問題解決には一つもプラスにならなかった。皮肉にも、民主党政権はこのパフォーマンスで点数を稼ぐどころか、大量失点してしまい、翌年の総選挙の大惨敗の原因を作った。

 民主党が民進党に変わってもやっていることは変わらない。熊本地震の発生直後、Twitterユーザーが民進党の公式Twitterアカウントにあてて「東日本大震災時の自民党のような対応を望みます。」とツイートしたところ、民進党公式Twitterが「それじゃあダメでしょうね。」とケンカ腰で返信した。民進党公式Twitterは続けて、「多くの議員が与野党なく災害対応に協力した中で、一部の自民党の有力議員が原発対応についてデマを流して政権の足を引っ張ったのも有名な話です」などと事実無根の自民党批判を展開した。当然これは一般の人の怒りを買い、民進党のアカウントは大炎上した。

 事態を重く見た民進党は、4月15日に謝罪し、一連の逆ギレツイートを削除した。「担当者の私見の入った不適切なツィートを削除させていただきました。今後は公式な情報提供につとめてまいります。申し訳ありません。」と歯切れの悪い言い訳をしているが、もうあとの祭りである。

 4月16日には共産党から次期衆院選に立候補予定の香西かつ介氏が、熊本地震の義援金の名目で募金活動を行いながら「熊本の被災地救援、北海道5区補選支援、党躍進のためにありがたく使わせていただきます。」などとツイートして大炎上した。募金を集める封筒に小さい注意書きがあったそうだが、ネットでは「詐欺だ!」という批判が噴出した。当たり前である。

 民進党も共産党も、震災の被害に遭われた方の救援や復興などにはまったく関心がないのかもしれない。一連の騒動から見るに、彼らはパニックを利用して党勢を拡大することしか考えていないのではないか?そのためには人を騙したり、嘘の情報を流したりしても、良心の呵責を感じないばかりか、きっとなんとも思わないのだろう。人の不幸に便乗して、自分の勢力拡大に利用しようとしているなら、まさに最低な連中と言わざるを得ない。

 最近、パワーの低下が著しい反原発勢力も今回の地震で調子に乗り始めた。共産党や民進党と同じく、デタラメな情報を流して人々を混乱させ、あわよくば勢力拡大に利用しようとしている。地震発生直後から鹿児島県の川内原発を停止せよという主張がSNS上に流れてくるが、どれもが事実無根の雑な内容ばかりだ。

熊本地震で安全性が確認された川内原発=鹿児島県薩摩川内市
熊本地震で安全性が確認された川内原発=鹿児島県薩摩川内市
 極めて単純な話だが、もしいま九州全域が電力不足に陥れば、震災の復興が遅れる。そして、被害はむしろ拡大し、その悪影響は九州全域ばかりか、日本全国に広がる。彼らは菅直人のように被害を拡大して日本を経済的に動揺させ、勢力拡大に利用できればそれでいいのだろう。しかし、大多数の日本人にとってそれは極めて迷惑な話だ。

 まずは、事実関係を確認しておこう。そもそも、川内原子力発電所よりも震源に近い熊本県天草郡に苓北発電所(70万kW×2、140万kW)、大分県大分市に新大分発電所(275.44万kW)がある。これら大型火力発電所が、今後発生する大きな余震などで停止した場合、どうやって電源を確保するのだろうか?被災地となった九州地域の電力供給で、今、頼れる電源の1つが川内原子力発電所であることは間違いのない事実である。

 しかも、今年はラニーニャ現象による猛暑が予想されており、川内原発の178万kWがすべて失われると、電力の供給および予備力が大幅に低下する。今回の熊本地震では多くの工場が被災し、日本全体のサプライチェーンが止まりかけている。そんな中、厳しい電力不足をわざと発生させる原発の停止は、復興支援という観点から考えてもあり得ないことだ。