赤木智弘(フリージャーナリスト)

 

 4月14日に発生した九州地方を震源とする震度7を記録した大地震は、震度6強の余震などを引き起こし、今もなお予断を許さない状況にある。

 ぼくは東京に住んでいるので、震災の状況を知るソースの多くはマスコミによる報道である。

 SNSに写真や動画が掲載されることも多いが、その大半は撮影対象に近寄りすぎているため、視野角が狭く周囲の状況が確認できない。家が潰れたのが1件だけの例外なのか、周囲も大きな被害を受けているのか。被災地一帯は一体どのような状況なのか。そうした街全体のリポートはやはり報道メディアの技術には及ばない。

 また、ヘリコプターによる空撮も、被害の大きさを知るためにはとても分かりやすい映像である。マスコミの存在は、九州から離れた我々が、被災地で実際にどのようなことが起きているのかを知るために、必要不可欠といえる。

地震被害を受けた熊本県南阿蘇村で、屋外に避難した人たち=16日午前6時37分(共同通信社ヘリから)
地震被害を受けた熊本県南阿蘇村で、屋外に避難した人たち
=16日午前6時37分(共同通信社ヘリから)
 しかし、当の被災地に居ると思わしき人たちから、SNSなどを通して伝えられるマスコミの評判はすこぶる悪い。

 よく聞かれるのが「マスコミのヘリの音がうるさくて、埋もれた人の声が聴こえない」という話だ。他にも「コンビニの食料をマスコミが買い占めた」とか「カメラクルーが現地で写真を取ろうとして人々の邪魔をしている」という話だ。

 まず「マスコミのヘリの音がうるさい」という話。ぼくはこれは眉唾であると考えている。そもそも被災地で飛んでいるヘリは、決してマスコミのヘリだけではない。被災地を飛ぶヘリの多くは、消防や自衛隊といった災害対応にあたるヘリコプターである。また、物資輸送のために、民間のヘリコプターが飛ぶケースも多いという。

 一方で、憎まれている報道ヘリは、昔はどうかは知らないが、今は低い高度を飛ぶことはない。なぜなら、空撮映像には広い視野で被害の全体像をつかむ映像が求められるので、低い高度を飛ぶ意味が無いからだ。また、阪神淡路大震災で批判を受け、ある程度の高度を保つように要請されているとも聞く。いずれにせよ地表に音が響くような低い場所を飛んでいない。

 象徴的な出来事が、去年に起きた茨城県西部で発生した鬼怒川の決壊による洪水で発生している。

 NHKがヘリで自衛隊の活動などを空撮していたところ、自衛隊機に極めて近いところをテレビ朝日の報道ヘリが飛んでいるような映像が捉えられ放送されたのである。これに対してネット上の正義の人たちが憤怒。「テレビ朝日は自衛隊の邪魔をするな!」というツイートがあふれた。(*1)  しかし、実際には自衛隊機とテレビ朝日のヘリの距離は全く近くなかった。NHKの空撮が極めて高い場所から超望遠のレンズで撮影しているために、遠近法により絵の距離感がおかしくなり、さも近い場所に両機がいるような絵になってしまったというだけの話だったのである。

 こうした状況で「報道ヘリがうるさい」という意見が出るのは、プレイステーション4だろうがWiiUだろうが、知らない人が「ファミコン」と言ってしまうのと同じ理屈だ。航空機ファンでもなければ地上から見てヘリの違いなどわからない。ヘリの音だけを聞いて十把一絡げに「報道ヘリが!」と思い込んでしまうのだろう。

 ちなみに「報道ヘリも人や物資を運べ」などと言っている人もいるが、報道ヘリが現場に降りるほうがよほどレスキューや自衛隊の邪魔になることは言うまでもないだろう。