潮匡人(評論家、拓殖大学客員教授)



朝日が報じた「疑問」

 4月19日付「朝日新聞」朝刊総合面に「被災地にオスプレイ 米軍が派遣、国内初の災害対応 熊本地震」と題した記事が掲載された。記事はこう書き出す。

 「米軍の新型輸送機オスプレイが18日、熊本地震の被災地へ物資輸送を始めた。オスプレイが日本の災害対応に使われるのは初めてだ。今回の救援活動に必要なのか。安全面に問題はないのか。疑問の声が出ているが、日本政府と米軍は、オスプレイの災害派遣での実績づくりを急いだ」

 見てのとおり、オスプレイの投入に否定的な脈絡から「疑問」を呈している。震災の最中、救援に当たる日米両政府を批判した記事だ。
支援物資を積んで、海自護衛艦「ひゅうが」から熊本県南阿蘇村へと飛び立つ米軍オスプレイ=4月19日午後2時8分、熊本県の八代海
支援物資を積んで、海自護衛艦「ひゅうが」から熊本県南阿蘇村へと飛び立つ米軍オスプレイ=4月19日午後2時8分、熊本県の八代海
 実は朝日の公式サイトに、上記と同じ記事が別途、掲載されている。上記は「4月19日05時00分」に同日付朝刊記事がアップされたものだが、別途、朝日新聞デジタルの記事として、前日の20時58分に同じ記事がアップされている。

 後者のタイトルは「米軍オスプレイ、初の災害対応 実績づくりに疑問の声も」。見出しは、こちらのほうが内容に忠実である。以下検証するとおり、記事は「初の災害対応」を「実績づくり」と断じ「疑問の声」だけを報じた。ちなみに、後者には「米軍の新型輸送機オスプレイが救援物資を載せ、熊本・南阿蘇村へ飛んだ」際の動画もアップされている。間違いなくPV(閲覧回数)に貢献したであろう。ため息を禁じ得ない。

 記事は「必要性、疑問の声」の中見出しを掲げ、こう疑問を呈した。

 「自衛隊にも約60人乗りの大型輸送ヘリCH47が約70機ある。約30人乗りの米軍オスプレイがさらに必要なのか。疑問の声が上がる」

 私は朝日記事のほうに疑問の声を上げたい。なるほど輸送兵員数はCH47がまさる。他方、CH47Jの巡航速度は260km/hだが、オスプレイは490㎞/hと倍近く、航続距離も数倍長い(オスプレイは空中給油も可能)。またオスプレイは海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦(DDH)での運用にも適しており、実際「ひゅうが」型護衛艦(DDH)での運用が予定されている。

 政府の公式見解を借りよう。「中期防衛力整備計画(平成26年度~平成30年度)」(平成25年12月17日国家安全保障会議及び閣議決定)はこう明記した。

 「輸送ヘリコプター(CH-47JA)の輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完・強化し得るティルト・ローター機を新たに導入する」