澤田哲生(東京工業大学先導原子力研究所助教)

 熊本県で続発している強い地震———連日のテレビ画面からは土砂崩れ、ひび割れた道路、ダム堤防からの漏水、屋根瓦が崩れ落ちてしまった熊本城などの衝撃的な映像が次々と流れてくる。被災し家族を失った人々の悲痛な嘆き。心よりお悔やみを申し上げたい。

 そんななか、この週末あたりから、私の元にもソーシャルネットワーク(SNS)などを通じて『川内原発を止めて欲しい』という嘆願の声が届くようになった。

 16日、政府の原子力防災大臣を兼任している丸川珠代環境大臣は、原子力規制委員会が川内原子力発電所を停止させる必要なしと判断している旨、公に報告した。まことに正しい判断に基づく情報発信である。

 熊本の地震が頻発している地域の断層の動きが、その先の鹿児島方面の断層の動きを誘発する可能性を否定できないとテレビで解説する地震学者も目にした。こうなると、一般の人々も心の中に恐怖が芽生えてくるのは想像に難くない。しかし、ここは今一度冷静になって考えてみることが大切だと思う。

 ポイントは3つある。

(1)規制委員会が新しい規制基準のもとで川内原子力発電所に課している基準地震動は620ガルである。(注:ガルは地震による加速度の単位)
(2)原子力発電所は、地震による大きな揺れを感じると自動的に停止する仕組みになっている。
(3)福島第一原子力発電所が3・11の際に受けた地震動は550ガルであった。

 まず、熊本県の一連の地震で川内原子力発電所の敷地内で観測された最大の揺れは、12.6ガルである。これは、耐震設計の基準地震動である620ガルに比べると、はるかに小さいのである。原子炉建屋など安全上重要な施設はこの〝とてつもなく大きい〟地震動に耐える設計になっていなければならない。

 地震の大きさを表現するもので私たちがよく耳にする「震度」というのがあるが、これは気象庁が「震度階級」というランク付けを発表しており、地震による揺れ方の強弱を感覚的に表す目安である。震度0から7まである。8以上の震度はない。例えば、震度7は次のように表現される。

震度7

・立っていることができず、はわないと動くことができない。揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。

・固定していない家具のほとんどが移動したり倒れたりし、飛ぶこともある。

・壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する建物がさらに多くなる。補強されているブロック塀も破損するものがある。


なお、この震度7に相当する目安の地震動は400ガル以上とされている。

 ちなみに、阪神大震災は震度7で、その時の地震動は場所によって異なるが、600〜800ガルであったとされている。

 川内原子力発電所に限らず、どの原子力発電所でも大きな地震の揺れを感じた際には、原子炉が自動停止する仕組みになっている。福島第一原子力発電所が、3.11の地震の揺れを感じて、問題なく安全の裡に自動停止したことはよく知られている。あの悲惨な原子力事故、シビアアクシデントを招いたのは、地震の後約50分後に襲来した巨大津波であった。