石川和男(社会保障経済研究所代表)

 4月14日夜9時26分に熊本地方で発生した震度7の地震に端を発した一連の地震は、「平成28年(2016年)熊本地震」と命名された。気象庁が22日19時現在で集計したところでは、震度7が2回、震度6強が2回、震度6弱が3回、震度5強が3回、震度5弱が7回など、震度1以上を観測したのは810回。前例のない連続地震となっている〔資料1参照〕。

<資料1>

 九州電力は15日から随時、川内原子力発電所(鹿児島県薩摩川内市)と玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)の状況に関して、情報発信を続けている。特に関心が集まっているのは、震源が最も近くにあって、1・2号機ともに稼働を継続している川内原子力発電所。

 原子力発電所の安全対策の最重要要素の一つは「耐震性」。その耐震性を決めるための基礎となる「揺れの大きさ」は、「基準地震動」(単位:ガル)と呼ばれる。九州電力では、川内原子力発電所の基準地震動を策定する際、『布田川・日奈久断層帯』全体(マグニチュード8.1)による揺れを100ガル程度と想定した。

 今回の地震を起こしたのは、まさにこの『布田川・日奈久断層帯』だ。

 基準地震動は、『布田川・日奈久断層帯』よりも敷地に近く影響が大きい3つの活断層を基に540ガルを、震源を特定せず策定する地震動として620ガルを策定した。川内原子力発電所は、この基準地震動に十分に余裕を持った揺れの大きさ(160ガル)で、安全に自動停止する仕組みを備えている。

 今回の地震は、『布田川・日奈久断層帯』の一部(マグニチュード7.3)がずれ動いたもので、観測された揺れは8.6ガル。これは、原子炉が自動停止する揺れの大きさ(160ガル)を大きく下回っている。

 今後、『布田川・日奈久断層帯』の南西部(残り)が動いても、全体よりも規模は小さく、川内原子力発電所に影響を与えるような揺れにはならないと考えられている。この見解は、原子力規制委員会にも共有されており、政府が川内1・2号機を停止する理由はないと断じているのは、そういう事情による。

<資料2:川内原子力発電所敷地周辺の活断層>
 
 大手マスコミ各社は、今回の熊本地震と川内原子力発電所の関係については、全体として落ち着いた感じの論調となっている。主要各紙の社説の抜粋は、以下の通り。

◎毎日新聞(4月16日付け社説):「新規制基準では、活断層の真上に原発の重要施設を建設することは禁じられている。活断層は、日本列島に2000以上走っている。いつ、どこで直下型地震が起きてもおかしくない。こういう地震列島の中で原発を維持していくリスクを改めて考えた人も多かっただろう」

◎朝日新聞(4月17日付け社説):「日奈久断層帯方面の地震拡大も引き続き心配だ。こちらも先には九州電力川内原発がある。一連の地震は、規模と連続性などが通常とは違う展開になっており、予断を許さない」

◎読売新聞(4月21日付け社説):「運転中の九州電力川内原子力発電所に関する情報発信も大切だ。被災地域への電力供給を担っている。原子力規制委員会は、原発の揺れは小さく、安全上の問題はないと判断している。現状を丁寧に説明し、不安軽減に努めたい」