河合雅司・産経新聞論説委員
 先日行われた政府・与党の社会保障改革に関する集中検討会議に出席した。改革案を提言している新聞4社からのヒアリングだ。菅直人首相をはじめ関係閣僚らに、産経新聞社の年金制度改革に対する基本的考え方を説明する機会を得た。

 安倍首相 説明において一番力点を置いたのが、少子高齢社会における社会保障の在り方だ。社会の基本は「自助自立」であると主張した。社会弱者に手を差し伸べることは当然であるが、少子化で社会の支え手は減り、膨大な赤字国債の処理も待ったなしだ。政府に多くを求め続けるわけにはいかないだろう。
 財源のめども立たないのに、子ども手当をはじめとするバラマキ政策を続ける民主党政権の首脳が、こうした主張にどこまで真剣に耳を傾けたかは分からないが、国民はそろそろ覚悟を持たねばなるまい。

 まずは、自分でできることは自分でやる。うまくいかなければ地域や仲間で助け合う。「共助」の仕組みを整えなければ、少子高齢社会は乗り越えられない。それでも手に負えないときが政府や地方自治体の出番だ。働けるうちは一生懸命に働き、老後に備える。なるべく他人の手を煩わせることなく、凛(りん)として生きたいものだ。

 とはいえ、個人の力ではどうにもならないこともある。例えば病気や要介護となったときだ。高齢化の進行で医療や介護のニーズは増大している。これらの財源を安定確保するには消費税増税が一番有力な選択肢である。しかし、経済や家計への影響を考えれば、税率引き上げには限度もあろう。

 社会保障制度のほころびには手を打たなければならないが、優先順位をつけるべきだ。医療や介護、少子化対策などに財源を優先配分する。そのためには年金改革で必要となる追加財源を極力抑えることだ。

 年金改革は、社会保険方式の現行制度の枠組みの中で手直しするのが現実的といえる。産経新聞社が高年金者の年金の一部を低所得受給者に振り向ける「自立応援年金制度」(仮称)を提言したのも、巨費を投じず弱者対策ができるからだ。

 切れ目のない社会保障の実現は理想ではある。しかし、それも国の財政に余裕があっての話だ。社会保障の名の下に、広く薄くばらまく政策は控えるべきである。本当に救済すべき人は誰なのか、しっかりと絞り込まなくてはならない。

 雇用が不安定で、低賃金に苦しんでいる若者も少なくない。職に就くまでの間、社会保障の面からもすべきことはあるだろう。だが、こうした人を社会保障政策でずっと支え続けることは本来の姿ではあるまい。

 むしろ自立支援策を強化し、一日も早く安定した暮らしができるようにしなければならない。社会保障政策の拡充も大事だが、それ以上に新たな雇用の創出や雇用のミスマッチ解消などに取り組む必要があろう。

 政局が混迷し、議論の先行きが危ぶまれるが、改革の先送りは許されない。実のある改革案が早期にまとまることを期待したい。