「億万長者ピエロ」「やがて消える泡沫候補」──そんな当初の見方は覆された。米大統領選の共和党候補者指名レースでトップを走る「暴言王」ドナルド・トランプ氏(69)。その対日政策に関する発言には「日本憎し」の心情が迸っている。その根源には何があるのか。在米ジャーナリストの高濱賛氏が探った。

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 「円安のせいで建機大手のキャタピラーは日本のコマツとの競争が難しくなっている。私が計画している不法移民流入阻止のためのメキシコ国境に作る壁はすべてキャタピラーに発注する」

 「日本は為替操作をしている。これに対抗するには、アメリカは日本製品に輸入関税をかける以外にない」

 口を開けば、“反日愛国”的な言説を繰り返すトランプ氏。東アジア問題専門家のロバート・ケリー氏は「トランプは今なお、“マイケル・クライトンの80年代”に生きている」と失笑する。クライトン氏は1980~90年代頃の日米貿易戦争を題材に、日本の脅威を描いた小説『ライジング・サン』の著者。ケリー氏は、トランプ氏の日本観はそれ以来“凍結”したままだというのだ。

 1988年、当時から不動産王として広く知られる存在だったトランプ氏は、ニューヨーク屈指の名門「プラザ・ホテル」を3億9000万ドルで買収した。

 プラザ・ホテル買収の翌月、氏は日本メディア「朝日新聞」の単独インタビューに応じている。当時の所有者は日本の青木建設などだったため、“日本人から買い戻した”ことを自慢したかったようだ。取材した記者は、アメリカの象徴のようなホテルを日本企業に買われたことが不満だったトランプ氏の、「愛国心」が背景にあるのではと推測する(*注)。

【*注/「朝日新聞」2016年3月8日付。その後、トランプ氏は「プラザ・ホテル」を1995年にサウジアラビアの王族とシンガポール企業に3億2500万ドルで売却している】

 この頃、トランプ氏は世界各地のカジノで名を馳せた「柏木昭男」という日本人ギャンブラーと出会った。「ロサンゼルス・タイムズ」(1992年2月8日付)によると、柏木氏は1990年2月、トランプ氏が経営するカジノで9億円を儲けた。これを知ったトランプ氏はその後、カジノ側が負けたカネを自ら取り戻そうと、柏木氏にバカラでの直接対決を挑んだという。
 6日間の死闘の末、トランプ氏は柏木氏から15億円を奪い返し、“リベンジ”を果たした。これほどまでの執念はどこから生まれたのか。

 1990年3月、アメリカの男性誌『プレイボーイ』に掲載されたトランプ氏のインタビューでは、日本および日本人への疑念や嫌悪感が赤裸々に語られている。

 「(日本が中東から輸入する原油を運ぶ)タンカーを守っているのは米軍の戦艦だ。日本人は『米軍に感謝する』と頭をペコペコ下げているが、その実、アメリカのやっているバカさ加減をあざ笑っている。日本の優秀なエンジニアは車やVCRを作り、アメリカの優秀なエンジニアはミサイルを作り、それで日本を守っているんだ」

 トランプ氏は当時43歳。“商売相手”としての日本人についてはこうも語る。

 「日本人はニューヨークのビルを買うことなぞ朝飯前。誰よりも高い値段でビルを買ってくれる。不動産業を営む私にとり日本人は最高の顧客だ。だが、なんとなく屈辱を感じているのも確かだ」(同前)

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